大石内科循環器科医院

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心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器に必要な血液を十分に送り出せなくなった状態を指します。心臓は、全身に血液を送り出す「収縮」と、血液を心臓内に取り込む「拡張」を繰り返すことで、全身に血液を循環させています。収縮と拡張のどちらか、あるいは両方がうまく機能しなくなると、心不全の状態に陥ります。心不全は、心臓のさまざまな病気や高血圧などで心臓に負担がかかり続けた結果、最終的に至る「症候群」です。

この記事では、心不全の原因や症状、検査方法などについて解説しています。記事を読めば心不全の治療法もわかるため、不安な方も安心して向き合えます。

心不全の原因

心不全の原因は、高血圧の放置による心臓への負担や心筋梗塞から心不全になるケースなどです。心不全は、大きく分けて急性心不全と慢性心不全の2種類に分類されます。急性心不全は、突然発症し、命の危機に直結することもあるため、緊急の対応が必要です。

慢性心不全は、徐々に進行し、長期間にわたって症状が続きます。慢性心不全の患者さんは、初期症状が軽いことが多く、「年のせいかな」と見過ごしてしまう方も少なくありません。放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。2022年に発表された心不全のガイドラインでも指摘されているように、心不全は世界中で主要な病気であり、患者さん一人ひとりの状況に合わせた治療が重要です。

心不全を起こし得る以下の病気には注意しましょう。

生活習慣病と心臓病が直接結びつかない方も多くいます。健康診断等で生活習慣病の指摘を受けた場合、生活習慣病が心臓に負担をかける場合がありますので、医療機関での定期的なフォローアップをおすすめします。

生活習慣病自体には症状のないものが多く、甘く見がちです。心臓や血管にダメージを与え、動脈硬化から狭心症や心筋梗塞を発症したり、心臓を肥大させたりしてさまざまな心臓病を引き起こします。悪化すると心不全を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

心不全の症状

心不全では、心臓が全身に血液を送り出せないことによる症状や、送り出せない血液が体にたまる症状が現れます。

心臓が全身に血液を送り出せないことによる症状(低心拍出の症状)

心臓が全身に血液を送り出せないことによる症状は以下のとおりです。

  • 全身の疲れやだるさ
  • 日中の尿量・回数の減少
  • 夜間の尿量増加
  • 手足の冷え

心臓から送り出さない血液が体にたまる症状(うっ血の症状)

心臓から送り出さない血液が体にたまる症状は以下のとおりです。

  • 坂道・階段などでの息切れ
  • 夜間の呼吸困難
  • 食欲不振
  • むくみ
  • 体重増加

心当たりのある方はぜひご相談ください。
他にもお腹の張りなど、典型的ではない症状が出ることもあるため、いつもと違う症状がある場合もお気軽にご相談ください。

心不全の検査

心不全の診断では、患者さんの自覚症状やこれまでの病歴を詳しく伺い、聴診やさまざまな検査を通じて心臓の状態を確認します。

胸部X線(レントゲン)

胸のレントゲン写真を撮ることで、心臓の大きさや形、肺に水が溜まっていないかなどを調べます。心不全になると、心臓が大きくなるまたは肺に血液が溜まって肺うっ血を起こすことがあります。レントゲン写真を見ることで、変化を視覚的に確認できます。

心電図

電極シールを胸や手足に貼り、心臓の電気的な活動を記録する検査です。心臓が規則正しく動いているか、心臓の筋肉に負担がかかっていないか、不整脈があるかなど、心臓の状態を調べます。

血液検査

心臓に負担がかかると分泌されるBNP/NT-proBNPというホルモンの量を調べ、心不全の診断や治療効果の判定に用います。また、心不全の原因となりえる糖尿病、慢性腎不全、貧血の有無を調べるためにHbA1c、クレアチニン、e-GFR、ヘモグロビンなども測定します。

血液を採取して、心不全に関連する物質の量を測定します。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)やNT-proBNP(N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心臓に負担がかかると血液中に増加する物質です。この数値を測定することで、心不全の重症度を客観的に評価することができます。2022 AHA/ACC/HFSAガイドラインでもバイオマーカーの有用性が強調されています。

心臓超音波検査(心エコー)

心臓の形、大きさ、はたらきを調べ、心不全の原因や重症度、治療効果の判定に用います。

心不全の治療

心不全の治療として主に、①心不全症状を改善する内服治療、②原因となっている病気の治療、③運動療法の3つがあります。

心不全症状を改善する内服治療

心不全症状を改善する内服治療は以下のとおりです。

  • 利尿薬
  • レニン・アンジオテンシン系抑制薬
  • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
  • β遮断薬
  • SGLT2阻害薬
  • HCNチャネル遮断薬
  • 可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬
  • 強心薬

さまざまな薬を患者さんの状態に合わせて処方します。

②心不全の原因となっている疾患の治療
こちらも重要です。例えば心筋梗塞狭心が原因となっていれば、狭くなった心臓の血管(冠動脈)を、カテーテルを用いて風船でひろげたり、ステンという金具を入れて血液の流れを良くします。カテーテルでの治療が難しい場合は、バイパス手術を行います。心臓弁膜症が原因であるならば、弁の形を整える手術や人工の弁に取り替える手術を行います。不整脈が原因となっているときは、不整脈を改善させる内服薬が用いられます。

心不全の原因となっている疾患の治療

心筋梗塞や狭心症が原因である場合は、狭くなった心臓の血管(冠動脈)を、カテーテルを用いて風船でひろげたり、ステントという金具を入れて血液の流れを良くしたりします。カテーテルでの治療が難しい場合は、バイパス手術を行います。心臓弁膜症が原因の場合は、弁の形を整える手術や人工の弁に取り替える手術を行います。不整脈が原因であるときは、不整脈を改善させる内服薬が用いられます。

運動療法

適切な運動は、体力の向上や筋力の維持に効果的であり心臓の負担を減らします。近年の研究では、運動療法を行うことで心不全による再入院の回数を減らし、心不全による死亡のリスクを低下させる可能性があると報告されています。

適切な運動の強さ

運動は強度が強ければ良いというわけではありません。 強さの目安として、「楽である」から「ややきつい」と感じる程度が良いとされています。

出典:一般社団法人 日本心不全学会 心不全手帳第3版より

 運動の種類

・有酸素運動
・バランストレーニング
・筋力トレーニング

運動の時間と回数

ややきつい運動(ボルグ指数13程度)を週に1~2回(1回あたり30分程度)
軽めの運動(ボルグ指数11程度)を週に3日以上(1回あたり30分程度)

 当院の運動プログラム

当院では、循環器科の専門医院として心臓病をお持ちの方のために安心して運動していただく為の運動プログラムを毎週木曜日(13:30~15:30)に行っています。少しでも心臓の力を回復させたい方や、健康的な生活を送りたい方など当院までお気軽にお問い合わせください。

 以下は運動プログラムの一例です。まずは血圧や脈拍数を測定して異常がないか確認します。皆さん一緒に椅子に座って準備運動から始めます。それぞれの体力に合わせて負担のない有酸素運動を行います。スタッフと一緒に楽しみながら取り組んでいただけます。

心不全の進行

心不全になると、急に心臓が止まってしまうというイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。心不全とは、心臓の働きが悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって、生命を縮める病気です。
以下の図は、心不全の一般的な経過を表したものです。心不全の進行は、ステージA〜Dの4段階に分類されます。

  • ステージA:リスク状態(症状なし)
  • ステージB:初期の心臓機能低下
  • ステージC:症状が出現
  • ステージD:重症段階

出典:ノバルティス ファーマ株式会社・大塚製薬株式会社「心臓SOS」より

高血圧や糖尿病などの基礎疾患を持つ患者さんの心不全のリスク状態はステージA、Bです。まだ無症状ではありますが、心不全発症に至らないように生活習慣の改善や基礎疾患の治療を積極的に行っていく必要があります。


ステージCに至り心不全の症状が現れ始めると、進行するにつれ、だんだんと日常生活にも支障をきたすようになります。ステージDという心不全がかなり進行した段階では、入院日数や入院回数が増え、今までと同様の生活を送ることが難しくなってしまいます。次のステージに進まないために早期発見・早期治療が大切です。

心不全を含む循環器病は予防が重要です。心不全を引き起こす原因はさまざまですが、患者さん自身が気をつけることで、心不全の悪化リスクを低下させる可能性があります。

まとめ

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身の臓器に必要な血液を十分に送り出せなくなったことを指します。心臓は、全身に血液を送り出す「収縮」と、血液を心臓内に取り込む「拡張」を繰り返していますが、収縮と拡張のどちらか、あるいは両方がうまく機能しなくなると、心不全の状態に陥ります。

以下は、心不全の予防に有効です。

  • 適切な運動
  • バランスの良い食事
  • 処方通りにしっかりお薬を飲む
  • 塩分を摂り過ぎない
  • 禁煙する
  • お酒を飲み過ぎない

心不全の症状は早期では気づかれないことも多いです。
日頃から体調の変化に注意し、気になる症状があるときはぜひ当院までご相談ください。

参考文献

2022年版 心不全管理に関するAHA/ACC/HFSAガイドライン

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