息苦しいことがあって不安に感じているのではないでしょうか。息苦しさには、肺や心臓の病気から精神的なもの、生活習慣まで、さまざまな原因が潜んでいるのです。 この記事では、息苦しさの4つの原因を具体的な病気の例を交えて解説します。息苦しさを悪化させているかもしれない、意外な生活習慣についても掘り下げます。
息苦しいと感じる4つの原因は以下のとおりです。
原因を知ることで、不安を少しでも和らげ、適切な対処法を見つけるための一助になれば幸いです。
肺は、体内に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する重要な臓器です。肺に何らかの異常が起こると、息苦しさを感じることがあります。「喘息」は、空気の通り道である気管支が狭くなってしまう病気です。
発作的に息苦しさや咳、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴が現れます。夜間や早朝に症状が悪化しやすく、ダニやハウスダストなどのアレルゲン、タバコの煙、風邪などの感染症がきっかけで発作が起こることもあります。
「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」は、主に長年の喫煙によって肺が徐々に壊れていく病気です。慢性的な咳や痰、息苦しさが主な症状です。初期には自覚症状が少ないため、気づかないうちに病気が進行してしまうこともあります。
「肺炎」は、細菌やウイルスによって肺に炎症が起こる病気です。息苦しさだけでなく、発熱や咳、痰、胸の痛みなどの症状も現れます。高齢者や免疫力が低下している方は、重症化しやすいので注意が必要です。
心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割があります。心臓の働きが弱まると、肺に血液がたまりやすくなり、息苦しさを感じます。「心不全」は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送れなくなる病気です。息切れや動悸、むくみなどがみられます。夜間や横になったときに息苦しさが強くなることがあります。
「狭心症」は、心臓の筋肉に血液を送る血管(冠動脈)が狭くなり、心臓の筋肉が酸素不足になることで起こる病気です。胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどがみられます。運動時や坂道を上るときなどに症状が出やすい傾向です。狭心症は、放置すると心筋梗塞という生命に関わる病気に進行する可能性があります。
以下の記事では心不全の原因や症状、検査や治療法について解説しているので、合わせて読んでみてください。
血液は、体中に酸素を運ぶ役割をしています。酸素を運ぶ赤血球が不足したり、赤血球の中にあるヘモグロビンという酸素を運ぶ物質が減ったりすると、「貧血」になります。貧血になると、体全体に酸素が行き渡らなくなり、息苦しさや動悸、めまい、疲れやすさなどの症状が現れます。
階段を上ったり、少し走ったりしただけで息切れがひどくなることもあります。貧血は、鉄分不足やビタミンB12不足、慢性的な出血などが原因で起こります。
息苦しさの原因は、肺や心臓、血液の病気だけではありません。「過換気症候群」は、精神的なストレスや不安などから呼吸の回数が増えすぎて、血液中の二酸化炭素が減ることで起こります。息苦しさやめまい、手足のしびれなどの症状が現れます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症として、息苦しさや倦怠感などが長引く場合もあります。甲状腺の病気や異物誤飲、食道がん、逆流性食道炎、肥満なども息苦しさの原因です。
息苦しさを感じた際は、原因を自己判断せず、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けましょう。以下の症状がある場合は注意してください。
異常な呼吸音(ゼーゼー、ヒューヒュー)がある場合もすぐに医療機関を受診するか救急車を呼びましょう。
息苦しさを悪化させる4つの生活習慣は以下のとおりです。
ご自身の生活習慣を見直すことで、少しでも楽に呼吸ができます。
タバコは、百害あって一利なしと言われるほど、健康にさまざまな悪影響を与えることが知られています。代表的なのが、肺へのダメージです。タバコの煙に含まれる有害物質は、肺の細胞を傷つけ、炎症を起こし、肺の組織を破壊します。タバコを吸い続けると、肺の機能が低下し、息苦しさを感じやすくなる場合があります。
タバコは肺胞の破壊につながり、一度壊れてしまうと元に戻りません。COPDは進行性の病気であり、重症化すると呼吸不全に至るリスクがあります。喫煙は喘息の症状も悪化させます。タバコの煙は気管支を刺激し、炎症を悪化させるため、喘息発作を誘発しやすくなります。小児喘息の場合は、両親の喫煙が子供の喘息発作の引き金になることが多いです。
お酒を飲むとリラックスした気分になりますが、飲みすぎると呼吸にも悪影響を及ぼします。アルコールは、脳にある呼吸中枢の働きを抑制するため、呼吸が浅く、遅くなってしまうのです。呼吸中枢は呼吸のリズムをコントロールする司令塔の役割を担っています。アルコールは司令塔の働きを鈍らせてしまうため、呼吸のペースが乱れてしまうのです。
睡眠中は呼吸が浅くなりがちなので、飲酒後に寝てしまうと呼吸が抑制され、無呼吸が生じるリスクが指摘されています。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が何度も止まる病気です。高血圧や不整脈、脳卒中などのリスクを高めることが知られています。アルコールの過剰摂取は免疫機能を低下させ、肺炎などの呼吸器感染症にかかりやすいです。
高血圧について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>大石内科循環器科医院|高血圧の基礎知識・症状・治療について
運動不足は、心臓と肺の機能を低下させ、息苦しさの原因です。運動不足になると、心臓のポンプ機能や肺のガス交換機能が低下し、酸素を効率的に取り込めなくなり、少し動いただけでも息切れしやすくなります。日常生活に支障をきたす場合があり、さらなる体力の低下を招く可能性もあります。
ウォーキングや軽い筋力トレーニングなどの運動を定期的に行うことで、心肺機能の維持・改善が可能です。
肥満は、呼吸器に大きな負担をかけ、息苦しさを悪化させる原因です。過剰な脂肪は、横隔膜の動きを制限し、肺を圧迫するため、肺の膨らみが悪くなり、十分な酸素を取り込めません。肥満は、睡眠時無呼吸症候群のリスクも高めます。
息苦しさの種類と症状は以下のとおりです。
突然息苦しい感覚がある方は、窒息感を覚えたりパニックを引き起こしたりする可能性があります。会議中に急に息が吸えなくなり、胸が締め付けられるように感じて、冷や汗が止まらなくなるなども考えられます。突然の息苦しさは、喘息発作や過換気症候群、パニック障害などさまざまな原因が考えられます。
常に息苦しい方は、呼吸が浅く、十分に空気が吸えないような感覚がある方が多いです。日常生活にも大きな支障をきたし、倦怠感や疲労感を引き起こします。慢性的な息苦しさの原因はさまざまですが、COPDや心不全のように進行性の病気の場合もありますので、早期の診断と治療が重要です。
運動中に息切れが激しくなり、呼吸が苦しくなる、労作性の呼吸困難もあります。健康な人でも激しい運動をすれば息苦しくなりますが、労作性呼吸困難の場合は、軽い運動でも息苦しさを感じます。
心臓弁膜症などの心臓の病気も、労作性呼吸困難を引き起こします。運動時の息苦しさを軽視せず、適切な検査を受けることが大切です。
以下の記事で、動悸の症状について詳しく解説しているので、合わせて読んでみてください。
>>動悸
息苦しさは、咳や痰、発熱や胸の痛みなど、他の症状として現れることもあります。他の症状があるため、息苦しさの原因を特定する重要な手がかりになります。
息苦しさと同時に現れる症状によって、考えられる病気は大きく異なります。自己判断は危険なので、医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。緊急性の高い症状の場合は、ためらわず救急車を呼ぶべきです。
息苦しさを和らげるための7つの対処法は以下のとおりです。
息苦しさを感じたときは、まず楽な姿勢を見つけることが大切です。人によって楽な姿勢は異なるため、色々な姿勢を試しましょう。
座って前かがみになる姿勢は、お腹の圧迫を軽減し、呼吸を楽にする効果があります。椅子に座り、テーブルに肘をついて、上半身を少し前に倒してみてください。肩の力を抜いてリラックスすることがポイントです。
壁にもたれて立つ姿勢も効果的です。壁に背中を付け、肩幅に足を広げ、軽く膝を曲げます。壁にもたれることで、胸が広がり、呼吸がしやすくなります。高齢者や体力のない方にとって、この姿勢は負担が少なく、楽に呼吸を続けられる場合が多いです。
横になる場合は、枕やクッションを使って上半身を高くすると、呼吸が楽になりやすいです。心臓や肺に問題がある方は、横になると息苦しくなることがあるため、上半身を高くする姿勢を試してみてください。
呼吸法を意識することで、息苦しさを軽減できます。口すぼめ呼吸は効果的です。息を吸うときは鼻から、吐くときは口をすぼめてゆっくりと吐き出す呼吸法です。ろうそくの火を消すように、優しく長く息を吐き出すことをイメージしてみてください。
お腹を膨らませたりへこませたりする腹式呼吸も効果的です。仰向けに寝て、お腹の上に手を置き、息を吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにお腹をへこませるように呼吸します。腹式呼吸は、横隔膜を効果的に使い、深い呼吸を促します。
呼吸を深くゆっくりにすることで、体内の酸素量を増やし、息苦しさを和らげる効果があります。呼吸困難の重症度に応じて、人工呼吸器や酸素マスクなどを用いて、呼吸を補助する方法です。
酸素吸入は、血液中の酸素濃度を上げることで、息苦しさを改善できます。医師の指示のもとで行われる治療法で、在宅酸素療法もあります。COPDの患者さんの中には、在宅酸素療法を行いながら日常生活を送っている方もいます。
息苦しさの原因によっては、薬物療法が有効な場合があります。喘息の場合は、気管支拡張薬を使用することで、気管支を広げ、呼吸を楽にできます。COPDの場合は、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を使用します。心不全の場合は、利尿薬や強心薬などを使用します。薬物療法は、根本原因にアプローチする治療の一つと考えられています。
呼吸リハビリテーションは、呼吸機能の改善や維持を目的としたプログラムです。息苦しさを感じにくい体作りをサポートし、日常生活の活動性を高める効果が期待できます。COPDの患者さんに対する運動療法の効果は、呼吸困難や疲労感を軽減し、生活の質(QOL)を向上させることが示されています。
ストレスは、息苦しさの原因の一つです。息苦しさの一種「過換気症候群」は、精神的なストレスが原因で起こる呼吸障害です。リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、十分な睡眠をとるなど、ストレスを軽減するための工夫をしましょう。
喫煙は、肺機能を低下させ、COPDなどの呼吸器疾患のリスクを高めるため、息苦しさを悪化させる原因です。禁煙は、息苦しさの改善だけでなく、健康全般にも大きなメリットがあります。COPDの最大の危険因子は喫煙であり、禁煙はCOPDの予防と進行抑制に最も効果的な方法です。
今すぐできる4つの応急処置は以下のとおりです。
処置を試みても改善しない場合や、症状がさらに悪化した場合は、ためらわずに医療機関を受診するか、救急車を呼びましょう。
新鮮な空気を吸うことは、息苦しいときに効果的です。窓を開けて外の空気を部屋に取り込んだり、換気扇を回して室内の空気を入れ替えたりしましょう。空気清浄機を使用するのも一つの方法です。可能な場合は、近くの公園や広場など、屋外に出て外の空気を吸うのもおすすめです。
冬など寒い時期に窓を開けすぎると体が冷えてしまう可能性があるので、注意しましょう。花粉症などのアレルギーを持っている人は、症状が悪化する可能性があるので、空気清浄機を使うなど、工夫が必要です。
息苦しいときは、衣類が呼吸を妨げている可能性があります。きつい服は、胸やお腹を締め付け、呼吸を困難にします。首元や胸元が締め付けられていると、息苦しさが増すため、ネクタイやボタン、ベルトなどを緩めましょう。女性の場合は、ブラジャーのホックを外すだけでも、呼吸が楽になることがあります。
息苦しいときは、脱水症状を起こしている可能性があります。脱水状態になると、血液が濃くなり、酸素を運ぶ能力が低下します。こまめな水分補給は、血液の循環をスムーズにし、酸素を体に行き渡らせるために重要です。水やお茶、スポーツドリンクなどを少しずつ、こまめに飲むように心がけましょう。
高齢者の場合、脱水症状に気づきにくいため、特に注意が必要です。経口補水液は、水やスポーツドリンクよりも効率的に水分と電解質を補給できるため、脱水症状が強い場合に有効です。
息苦しさは、命に関わる重篤な病気のサインの可能性もあります。喘息発作や心筋梗塞、アナフィラキシーショックなどは、急激に症状が悪化し、生命の危険にさらされる場合があります。以下の症状が現れたら、ためらわずに救急車を呼びましょう。
救急車を呼ぶときは、落ち着いて、現在の状況、患者さんの年齢や性別、具体的な症状などを伝えましょう。
息苦しさの原因はさまざまで、肺や心臓、貧血など、その他にも多くの病気が考えられます。喫煙や過度な飲酒、運動不足や肥満といった生活習慣も息苦しさを悪化させる要因です。息苦しさの種類もさまざまで、突然起こる発作性のもの、常に感じている慢性的なもの、運動時に感じるものなどがあります。
咳や痰、発熱、胸の痛みといった症状を伴う場合もあります。息苦しいと感じたら、楽な姿勢をとる、呼吸法を意識する、水分補給をするといった対処法を試しましょう。症状が改善しない場合や悪化した場合は、すぐに医療機関を受診してください。
大石内科循環器科医院
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