「肥満」はよく耳にする言葉だけど、実際どんな状態のことを指すの?と疑問に思う人もいるかもしれません。ここでは肥満の定義や基準、そしてそれが身体に及ぼす影響について解説していきます。
肥満は単に体重が多い状態を指すのではなく、「体の中に脂肪が過剰に蓄積した状態」のことをいいます。 食べ過ぎや運動不足などが原因でエネルギーの摂取量と消費量のバランスが崩れると、余分なエネルギーが脂肪として体に蓄えられていきます。この状態が続くと、肥満につながってしまうのです。
例えば毎日おやつにスナック菓子をたくさん食べて、ジュースを何杯も飲んでいたらどうなるでしょうか? 当然ですが摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、肥満のリスクが高まります。このように、肥満は日々の生活習慣と密接に関わっているのです。
特に最近は、スマートフォンやゲームの普及により子どもの外遊びの時間が減り、運動不足による肥満が増加傾向にあります。
肥満度を測る指標として、BMI(Body Mass Index)がよく用いられます。BMIは、体重と身長から算出される数値で、国際的な基準として広く採用されています。
計算式は、「BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)」で表されます。例えば、身長160cm、体重60kgの人のBMIは、60 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 23.44となります。
BMIの値によって、肥満の程度は以下のように分類されます。
分類 | BMI | 具体的なイメージ |
---|---|---|
低体重(やせ) | 18.5未満 | 例えば、身長160cmで体重が47.4kg未満の方 |
普通体重 | 18.5以上25未満 | 例えば、身長160cmで体重が47.4kg以上64kg未満の方 |
肥満度1(肥満) | 25以上30未満 | 例えば、身長160cmで体重が64kg以上76.8kg未満の方 |
肥満度2(肥満) | 30以上35未満 | 例えば、身長160cmで体重が76.8kg以上89.6kg未満の方 |
肥満度3(肥満) | 35以上40未満 | 例えば、身長160cmで体重が89.6kg以上102.4kg未満の方 |
肥満度4(肥満) | 40以上 | 例えば、身長160cmで体重が102.4kg以上の方 |
BMIが25以上の状態が肥満とされており、数値が大きくなるほど肥満の程度が重症化するとされています。
肥満は見た目の問題だけでなく、健康にも様々な悪影響を及ぼす可能性があります。肥満は、生活習慣病と呼ばれる、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの病気のリスクを高めます。
例えば血管を水道管に例えると、肥満は水道管の中に脂肪が溜まっていく状態に似ています。脂肪が溜まると血液の流れが悪くなり、最終的には水道管が詰まってしまうように血管が詰まってしまうことがあります。これが動脈硬化です。動脈硬化は、心臓病や脳卒中などの深刻な病気を引き起こす可能性があります。
また、肥満は睡眠時無呼吸症候群・脂肪肝・一部の癌などのリスクを高めることも知られています。さらに関節への負担が増加し、腰痛や膝痛などを引き起こしやすくなることもあります。
肥満は健康的な生活を送る上で大きなリスク因子となる可能性があることを、しっかりと認識しておくことが大切です。特にBMIが高い状態が続くと、妊娠しにくくなるという研究結果も出ています。ですから健康的な生活を送るためにも、肥満の予防と改善に積極的に取り組むことが重要です。
肥満は見た目だけの問題ではありません。体に様々な影響を与える可能性があります。今回は肥満の原因と種類について、詳しく見ていきましょう。
遺伝は親から子へと受け継がれる、体の設計図のようなものです。目の色や身長が親に似ているように、肥満になりやすいかどうかも遺伝が関係していることがあります。
例えば両親が肥満の場合、子どもも肥満になりやすいという研究結果があります。これは、生まれつき脂肪を溜め込みやすい体質を受け継いでいる可能性を示唆しています。
しかし、遺伝的な要素があっても、必ずしも肥満になるわけではありません。日々の生活習慣を改善することで、肥満を予防・改善できる可能性は十分にあります。遺伝は体質のベースとなるものですが、生活習慣によってその影響は大きく変わるのです。
肥満の大きな原因の一つに、生活習慣があります。毎日食べるものや運動習慣によって、肥満のリスクは大きく変わってきます。
例えば、甘いお菓子やジュースばかり飲んでいると、体はエネルギー過多の状態になります。この余分なエネルギーは、使われずに脂肪として蓄積され、肥満につながってしまうのです。
また、運動不足も肥満の原因となります。運動不足になると、消費エネルギーが減少し、エネルギーの摂取と消費のバランスが崩れ、肥満のリスクが高まります。
要因 | 具体的な例 |
---|---|
食生活 | ・甘いお菓子やジュースの摂り過ぎ・インスタント食品やファストフードの食べ過ぎ・食事の量が多い、早食い・朝食を抜く |
運動習慣 | ・運動不足・デスクワーク中心の生活・車での移動が多い |
その他習慣 | ・睡眠不足・ストレス・過度な飲酒 |
食生活の乱れや運動不足だけでなく、睡眠不足やストレス、過度な飲酒なども肥満に繋がることがあります。特に、睡眠不足は食欲を抑えるホルモンの分泌を低下させ、食欲増進ホルモンの分泌を増加させるため過食に繋がりやすい状態を引き起こします。
最新の研究では、肥満および過体重の女性に対して、食生活の改善や運動習慣の指導などを行う生活習慣介入を実施した結果、体重、ウエストサイズ、BMI の減少と不妊の増加に有益な効果を示したという報告があります。この研究では、BMIが35kg/m^2以上の場合は効果が見られなかったという結果も出ており、肥満の程度によって効果が異なる可能性も示唆されています。
精神的要因と肥満の関係
ストレスを感じると、甘いものや脂っこいものをたくさん食べたくなることはありませんか? これは、ストレスホルモンの影響で、食欲が増進してしまうためです。
また、ストレスや不安、抑うつ状態などが続くと、自律神経のバランスが乱れ、代謝機能が低下し、肥満につながりやすくなることがあります。
子どもの頃から肥満である場合、成長や発達に影響が出る可能性があります。例えば、骨や関節に負担がかかり、成長痛や姿勢が悪くなるリスクが高まります。また、思春期を迎えるのが早まったり、逆に遅くなったりすることもあります。さらに子どもの頃から肥満の状態が続くと、大人になってからも肥満が継続し生活習慣病のリスクが高くなる可能性があります。
子どもの肥満は将来的に健康上の問題を引き起こすリスクが高まるだけでなく、精神的なストレスや自己肯定感の低下にも繋がる可能性があります。子どものうちから、バランスの取れた食生活や適度な運動を習慣づけることが大切です。
肥満は見た目の問題だけでなく、私たちの体に様々な負担をかけ、健康を脅かす深刻なリスク因子となります。まるで静かに進行する時限爆弾のようなもので、放置すれば健康な未来を蝕んでしまう可能性があります。
肥満は、心臓と血管の病気である心血管疾患のリスクを大幅に増加させます。心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割を担っていますが、肥満は、この重要なポンプに過剰な負担をかける原因となります。
想像してみてください。毎日、重い荷物を背負って生活しているとしたらどうでしょうか?きっと、体は疲れ果ててしまうでしょう。肥満もこれと同じように、過剰な脂肪が心臓に負担をかけ続け、その結果、心臓は懸命に働かなければならなくなり、やがて疲弊してしまうのです。
私の患者さんの中にも肥満が原因で心臓に負担がかかり、動悸や息切れを訴える方が多くいらっしゃいます。特に階段を上る際や少し動いただけで息苦しさを感じるようになり、日常生活に支障が出てしまうケースも少なくありません。
肥満が引き起こす代表的な心血管疾患には、以下のようなものがあります。
心臓に栄養や酸素を供給する冠動脈が、動脈硬化によって狭窄したり、閉塞したりすることで起こります。狭心症や心筋梗塞などの深刻な病気を引き起こす可能性があります。
脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こり、脳梗塞や脳出血を引き起こします。命に関わるだけでなく、後遺症が残る可能性も高い病気です。
肥満は糖尿病、特に2型糖尿病のリスクを飛躍的に高めます。2型糖尿病はインスリンというホルモンの働きが低下することで、血液中の糖(ブドウ糖)がうまく利用されなくなり血糖値が慢性的に高くなる病気です。
私たちの体は食事から摂取した糖をエネルギー源として利用しますが、この糖を細胞に取り込むためにはインスリンというホルモンが鍵となります。肥満の状態が続くと、この鍵穴が錆びついてしまいインスリンがうまく機能しなくなってしまうのです。
糖尿病は初期には自覚症状が出にくいことが多く、気づかないうちに病気が進行しているケースも少なくありません。しかし放置すると失明や足の切断、人工透析が必要となるなど深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。
肥満は、高血圧のリスクも高めることがわかっています。高血圧は、血管に常に高い圧力がかかっている状態であり、血管を傷つけ、動脈硬化を進行させる大きな要因となります。
肥満になると、脂肪細胞から血圧を上昇させる物質が分泌されやすくなることや、血管を収縮させる自律神経が過剰に働くことなどが原因で、高血圧のリスクが高まると考えられています。
高血圧も自覚症状が乏しい病気ですが放置すると心筋梗塞や脳卒中、腎臓病など命に関わる病気を引き起こす可能性があります。
肥満は、呼吸器の病気のリスクも高めます。肥満になると気道の周囲に脂肪が蓄積し、気道が狭くなるため、呼吸が困難になることがあります。
例えるなら風船を膨らませる際に風船の外側から手で圧迫すると、空気の通り道が狭くなり膨らませにくくなるのと同じです。肥満によって気道が狭くなると十分な酸素を取り込むことが難しくなり、呼吸器疾患のリスクが高まります。
肥満と関連性の高い呼吸器疾患には、以下のようなものがあります。
睡眠中に呼吸が止まる、または浅くなる病気です。肥満の人は首周りの気道が狭くなるため、SASのリスクが高くなります。
重度の肥満によって、慢性的な呼吸不全を引き起こす病気です。
肥満は大腸癌、乳癌、子宮体癌など、いくつかの癌のリスクを高めることが知られています。
肥満は慢性的な炎症を引き起こし、細胞のDNAを傷つけ癌化を促進する可能性があります。また、インスリン抵抗性やホルモンバランスの乱れなども、癌のリスクを高めると考えられています。
肥満と癌の関係はまだ研究段階ですが、肥満が癌のリスクを高める可能性は無視できません。
肥満は様々な病気のリスクを高め、健康を脅かす深刻な問題です。健康的な生活を送るためには、肥満の予防と改善が非常に重要です。
「肥満かな?」と思ったら、医療機関で検査を受けることができます。肥満の検査は、身長や体重を測るだけではありません。体組成計や血液検査など様々な方法を組み合わせて、あなたの体の状態を詳しくチェックしていきます。
BMIは、Body Mass Index(ボディマスインデックス)の略で、あなたの身長と体重から計算される数値です。BMIの数値を見ることで、肥満度合いを客観的に知ることができます。
例えば、身長160cmで体重が50kgの方と70kgの方では、見た目の体つきが大きく違いますよね?BMIは、このように身長と体重の関係から肥満度を判定する指標なのです。
計算式は「体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)」です。身長160cm (1.6m) 、体重60kgの方であれば、60 ÷ 1.6 ÷ 1.6 = 23.44となり、BMIは約23.4となります。
このBMIが25以上の場合を「肥満」と定義しています。
分類 | BMI | 具体的なイメージ |
---|---|---|
低体重(やせ) | 18.5未満 | 例えば、身長160cmで体重が47.4kg未満の方 |
普通体重 | 18.5以上25未満 | 例えば、身長160cmで体重が47.4kg以上64kg未満の方 |
肥満度1(肥満) | 25以上30未満 | 例えば、身長160cmで体重が64kg以上76.8kg未満の方 |
肥満度2(肥満) | 30以上35未満 | 例えば、身長160cmで体重が76.8kg以上89.6kg未満の方 |
肥満度3(肥満) | 35以上40未満 | 例えば、身長160cmで体重が89.6kg以上102.4kg未満の方 |
肥満度4(肥満) | 40以上 | 例えば、身長160cmで体重が102.4kg以上の方 |
ただし、BMIはあくまでも目安の一つです。例えば、スポーツ選手のように筋肉量が多い方は、BMIが高くても肥満とは限りません。これは、筋肉は脂肪よりも重いからです。ですから、BMIだけで肥満と決めつけるのではなく、医師の診察を受けることが重要です。
体重計に乗ると、体重だけでなく「体脂肪率」が表示されるものがありますよね。体脂肪率とは、体重に占める体脂肪の割合のことです。
体脂肪率は家庭用の体組成計でも測定できますが、医療機関ではより正確な体脂肪率を測定することができます。
体脂肪率が高いということは、体に脂肪が多く蓄積されている状態です。脂肪はエネルギーを蓄えるために必要なものですが、過剰に蓄積される、肥満や生活習慣病のリスクを高めてしまいます。
体脂肪率の目安は、年齢や性別によって異なります。
性別 | 年齢 | 体脂肪率の目安 |
---|---|---|
男性 | 20~39歳 | 15~19% |
男性 | 40~59歳 | 17~22% |
男性 | 60歳以上 | 20~24% |
女性 | 20~39歳 | 20~24% |
女性 | 40~59歳 | 22~27% |
女性 | 60歳以上 | 24~29% |
一般的に、男性よりも女性の方が体脂肪率が高めです。これは、女性ホルモンの影響で皮下脂肪がつきやすいからです。また、年齢を重ねるにつれて基礎代謝が低下し、体脂肪率が増加しやすくなる傾向があります。
血液検査では、肥満に関連するさまざまな項目を調べることができます。
例えば血糖値が高い場合は糖尿病のリスクが、中性脂肪やコレステロール値が高い場合は動脈硬化のリスクがそれぞれ高まります。
肥満と関連性の高い血液検査の項目と、その異常値が示唆する病気には以下のようなものがあります。
項目 | 異常値 | 示唆する病気 |
---|---|---|
血糖値 | 高血糖 | 糖尿病 |
中性脂肪 | 高脂血症 | 動脈硬化・筋梗塞・脳梗塞 |
コレステロール値 | 高コレステロール血症 | 動脈硬化・筋梗塞・脳梗塞 |
これらの検査結果をもとに医師は患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切な治療法や生活習慣改善のアドバイスを行います。
画像検査では、お腹の中の様子を画像で確認することができます。特に、内臓脂肪の蓄積状態を評価するのに役立ちます。
内臓脂肪は、内臓の周りについている脂肪のことです。皮下脂肪のように、見た目ですぐにわかるわけではありませんが、過剰に蓄積すると糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めることが知られています。
代表的な画像検査には、CT検査やMRI検査などがあります。これらの検査では、内臓脂肪の量や分布を詳しく調べることができます。
肥満の診断は、これらの検査結果と問診や身体診察の結果などを総合的に判断して行われます。
肥満治療は、大きく分けて食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科的治療の5つの選択肢があります。これらの治療法は、患者さん一人ひとりの状況や希望に合わせて、組み合わせて行われることが多いです。
例えば、糖尿病や高血圧などの合併症がある場合は、それらの治療も並行して行う必要がありますし、患者さんのライフスタイルや食習慣なども考慮して、無理なく続けられる治療計画を立てることが大切です。
食事療法は、肥満治療の基礎となる大切な要素です。適切な食事管理は体重管理だけでなく、健康全般の改善にもつながります。食事療法というと、厳しい食事制限をイメージする方もいるかもしれません。しかし大切なのは、無理なく続けられる食習慣を身につけることです。
例えば毎日甘いジュースを飲んでいる人は、それを水やお茶に変えてみましょう。ジュースは一見、爽やかで体に良さそうに見えますが、実は大量の砂糖が含まれているため肥満の原因になります。水やお茶に変えるだけで、摂取カロリーを大幅に減らすことができます。
また、ご飯が好きでたくさん食べてしまう人は、お茶碗を少し小さめなものに変えてみましょう。お茶碗を小さいものに変えるだけで、無意識のうちに食べる量を減らすことができます。
食事療法では栄養バランスを意識しながら、摂取カロリーを抑えることが重要です。具体的には、以下のポイントを心がけましょう。
毎食、野菜をたっぷり食べるように心がけましょう。野菜は低カロリーでビタミンやミネラルが豊富なので、健康的に体重を減らすために効果的です。食物繊維も豊富なので、血糖値の上昇を抑えたり、便秘を解消したりする効果もあります。
肉、魚、大豆製品など、良質なタンパク質を積極的に摂りましょう。タンパク質は、筋肉の維持や代謝アップに役立ちます。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、太りにくい体作りにもつながります。
ご飯やパンなどの炭水化物はエネルギー源として必要ですが、摂りすぎると体脂肪として蓄積されやすいため、注意が必要です。白米よりも玄米、食パンよりも全粒粉パンなど精製度の低いものを選ぶようにしましょう。精製度の低いものは食物繊維が豊富で、血糖値の上昇が緩やかになるため肥満予防に効果的です。
脂質はエネルギー源として重要な栄養素ですが、摂りすぎると肥満の原因になります。揚げ物や脂肪分の多い肉などは控えめにし、魚やオリーブオイルなど良質な脂質を摂るように心がけましょう。
運動療法は、食事療法と並んで肥満治療に欠かせない要素です。運動は消費カロリーを増やし、基礎代謝を向上させることで体重減量を促進します。また運動にはストレス解消や生活習慣病の予防など、様々な健康効果も期待できます。
運動療法というと、激しい運動をイメージする方もいるかもしれません。しかし大切なのは、無理なく続けられる運動習慣を身につけることです。
例えば普段あまり運動をしていない人は、まずは1日10分からでも良いのでウォーキングなどの軽い運動から始めてみましょう。近所の公園を散歩したり、買い物に行く際に遠回りしたりするのも良いでしょう。慣れてきたらジョギングや水泳など、運動強度を徐々に上げていくと良いでしょう。
運動の種類は、特にこだわる必要はありません。自分が楽しく続けられる運動を見つけることが大切です。
行動療法は食生活や運動習慣などの生活習慣を見直し、改善することで、肥満治療を目指す方法です。肥満は遺伝的な要因だけでなく、生活習慣の影響も大きく受けています。実際、最近の研究では肥満および過体重の女性に対して、生活習慣への介入を行うことで体重・ウエストサイズ・BMIの減少といった効果が見られ、不妊の改善にもつながることが示唆されています。
行動療法では患者さん自身の生活習慣を見直し、問題点を改善していくことが重要となります。
例えば「夜遅くに食事をしてしまう」「間食が多い」「ストレスを感じると食べ過ぎてしまう」などの行動パターンを把握し、改善するための具体的な方法を考え実践していきます。
夜遅くに食事をしてしまう場合は夕食の時間を早めたり、寝る前に軽いストレッチや読書をする習慣をつけたりすることで、空腹感を抑えることができます。間食が多い場合は間食の内容をヘルシーなものに変えたり、間食をする時間帯を決めたりすることで、摂取カロリーを抑えられます。ストレスを感じると食べ過ぎてしまう場合はストレスを解消する方法を見つけたり、食べること以外の方法でストレスを発散したりすることが大切です。
行動療法では医師や管理栄養士などの専門家のサポートを受けながら、目標設定や行動計画の作成、行動記録の分析などを行い具体的な行動変容を目指します。
薬物療法は、食事療法や運動療法などの生活習慣改善と並行して行われる治療法です。肥満に伴う症状を改善したり、体重減量を促進したりする効果が期待できます。薬物療法は、あくまで補助的な治療法であり薬だけに頼るのではなく生活習慣の改善と組み合わせることが重要です。
外科的治療は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法などの治療を行っても十分な効果が得られない場合に検討されます。
外科的治療には、胃の大きさを小さくする手術や、食物の吸収を抑制する手術など、様々な方法があります。外科的治療は、体重を大きく減らす効果が期待できますが、合併症のリスクもあるため、専門医と十分に相談した上で、慎重に判断する必要があります。
肥満は、放置すると様々な合併症を引き起こすリスクがあります。肥満治療は、決して楽なものではありませんが、専門家のサポートを受けながら、自分にあった治療法を見つけていくことが大切です。
当院では行動療法、食事療法、薬物療法を組み合わせた肥満(ダイエット)外来を行っております。ご興味のある方はぜひ当院にご相談下さい。
肥満というと、ただ体重が多い、見た目が太っているというイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし実際には肥満はさまざまな要因が複雑に絡み合った結果であり、健康への影響も人それぞれです。正しい知識を持つことは、偏見をなくし、健康的な生活を送るための第一歩となります。
肥満を取り巻く誤解を具体的に見ていきましょう。
本記事では、肥満の定義、基準、原因、健康への影響、治療法について詳しく解説しました。肥満は単に体重が多い状態ではなく、体の中に脂肪が過剰に蓄積した状態であり遺伝、生活習慣、精神的な要因など様々な要因が複雑に絡み合って起こります。放置すると糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、癌などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。肥満治療には食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科的治療など様々な選択肢があり患者さんの状況に合わせて最適な治療法が選択されます。
当院では行動療法、食事療法、薬物療法を組み合わせた肥満(ダイエット)外来を行っております。ご興味のある方はぜひ当院にご相談下さい。
Sustarsic A, Hadzic V, Meulenberg CJW, Abazovic E, Videmsek M, Burnik Papler T and Paravlic AH. “The influence of lifestyle interventions and overweight on infertility: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression of randomized controlled trials.” Frontiers in medicine 10, no. (2023): 1264947.