認知症、それは誰にとっても不安な響きを持つ言葉かもしれません。記憶の衰え、見当識障害、そして時に現れる幻覚や徘徊……。しかし、認知症になっても、住み慣れた地域で自分らしく穏やかに過ごすことは可能です。
その鍵となるのが、認知症対応型デイサービスです。1ユニット12名以下という手厚い職員配置で、認知症の知識を持ったスタッフが個別のケアプランに基づき、認知症の症状緩和に繋がるレクリエーションや機能訓練を提供します。さらに、緊急時対応体制も整っており、ご本人とご家族の安心を支えます。
この記事では、認知症対応型デイサービスの5つの特徴、選び方の4つのポイント、そして費用や手続きまで、詳しく解説します。最適なデイサービス選びは、ご本人とご家族の未来を明るく照らす第一歩となるでしょう。
読み進めることで、認知症対応型デイサービスが持つ可能性、そして、認知症と共に生きるための具体的な方法が見えてくるはずです。
併せて認知症の中核症状とはもお読みください。
認知症の周辺症状とはの詳細はこちらをご覧ください。
静岡市民の方は、令和7年度6月より65歳以上の方を対象に「静岡市物忘れ検診」制度が始まりました。無料で受けられる検査で認知症の早期発見・早期対応で今の生活をなべく長く維持していくため検査です。当施設と併設されている大石内科循環器科医院で受診いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。
大石内科循環器科医院では物忘れ(認知症)外来を受診いただけます。認知症(もの忘れ)外来では「すぐに忘れてしまう」といった認知症のような症状が「加齢に伴う正常なもの忘れ」なのか、「認知症の入り口」なのかを診断します。
ご自身やご家族の方が「なにかおかしい」と感じたら、なるべく早めに当院の認知症(もの忘れ)外来にご相談ください。
認知症と診断された時、ご本人だけでなくご家族も、これからどうなるのかと大きな不安を抱かれることでしょう。認知症は、中核症状である記憶障害、見当識障害、判断力など認知機能の低下に加え、周辺症状として幻覚や妄想、抑うつ、興奮、徘徊、攻撃性、不眠など、実に多様な症状が現れます。
これらの症状は人それぞれで、進行の速度も異なります。しかし、認知症になっても、住み慣れた地域で、自分らしく穏やかに生活を送ることが可能です。そのための心強い味方となるのが、認知症対応型デイサービスです。
認知症対応型デイサービスは、他のデイサービスとは異なる5つの特徴を備えています。これらの特徴を理解することで、ご自身やご家族にとって最適なサービス選びに役立てていただけます。
このように、認知症対応型デイサービスでは、個々の症状に合わせた柔軟なケアを提供することで、症状の進行を防ぎ、生活の質を向上させることを目指します。併せて認知症による徘徊はなぜ起こる?もお読みください。
認知症対応型デイサービスは、認知症ケアに関する専門的な知識と経験を持つスタッフが対応します。認知症の症状は多岐にわたり、一人ひとり異なるため、画一的なケアでは対応できません。
例えば徘徊の症状がある方には、GPS機能付きの見守り機器を提案したり、施設内に安全な徘徊空間を設けるなどの工夫が必要です。また、興奮しやすい方には、落ち着いた声かけや環境調整、必要に応じて薬物療法なども検討されます。
このように、認知症対応型デイサービスでは、個々の症状に合わせた柔軟なケアを提供することで、症状の進行を防ぎ、生活の質を向上させることを目指します。
併せて認知症になりやすい人の特徴とは?もお読みください。
認知症対応型デイサービスは、1ユニット12名以下という少人数制を特徴としています。これは、認知症の方一人ひとりに寄り添った、きめ細やかなケアを提供するために非常に重要です。
大人数の施設では、どうしても画一的なケアになりがちですが、少人数制であれば、利用者の個性やペースに合わせた個別ケアが可能になります。例えば、手作業が好きな方には、折り紙や編み物などの活動を提供し、音楽が好きな方には、歌や楽器演奏の機会を設けるなど、個々の趣味や嗜好に合わせた活動を提供できます。
介護保険サービスを利用するには、ケアプランの作成が必要です。ケアプランについては、以下の記事で詳しく解説しています。→ ケアマネージャーの依頼、ケアプランの作成
介護保険サービスを利用するには、ケアプランの作成が必要です。ケアプランとは、利用者の状態や希望、課題などを考慮し、日常生活の自立支援や介護負担の軽減を目的とした、具体的なサービス内容を記載した計画書です。
認知症対応型デイサービスでは、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいてサービスを提供します。ケアプランには、入浴や食事の介助、排泄の介助、服薬管理、機能訓練、レクリエーション活動など、多岐にわたるサービス内容が記載されます。
認知症の症状緩和に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。→ 認知症は改善できる?
認知症の予防に関する情報も併せてお読みください。→ 認知症予防のためにできること
認知症対応型デイサービスでは、認知症の症状緩和や進行抑制を目的とした、様々なレクリエーションや機能訓練を提供しています。
例えば、回想法は、懐かしい写真や音楽などを用いて昔の記憶を呼び起こし、脳の活性化を促す効果が期待できます。音楽療法は、歌や楽器演奏を通して情緒の安定やコミュニケーション能力の向上に役立ちます。
また、軽い運動プログラムも、認知症の症状緩和に効果的です。風船バレーや体操などの運動は、身体機能の維持・向上だけでなく、視空間の認識と維持・向上や、脳の構成力、注意力を刺激して機能の維持・改善を促します。
併せて認知症になりやすい人の特徴とは?もお読みください。
認知症を発症したら頑固になった?その原因と対応方法を解説の詳細はこちらをご覧ください。
認知症の方は、急な体調変化や予期せぬ事故のリスクが高いため、緊急時対応体制が不可欠です。認知症対応型デイサービスでは、看護師の配置や提携医療機関との連携、緊急時に備えた体制を整えています。
また、アルツハイマー型認知症の治療薬として、ドネペジルとメマンチンの単独療法及び、併用療法により認知症の進行を緩やかにします。
さらに、うつ病や不安、不眠といったアルツハイマー病の合併症に対して、抗うつ剤や抗精神剤を的確に使用することにより、その症状の軽減を図ることができます。
認知症と診断されたご家族のために、最適なデイサービスを選ぶことは、ご本人とご家族の将来の生活の質を大きく左右する重要な決断です。デイサービスは、単なる一時的なお預かり場所ではなく、認知症の進行を穏やかにし、その人らしい生活を支え、生活の質を向上させるための重要な役割を担っています。
だからこそ、ご本人の個性や状態、ご家族の状況に合ったデイサービス選びが不可欠です。ここでは、最適なデイサービス選びのための4つのポイントを、医療現場の視点も交えながら詳しく解説します。
デイサービスの利用料金は、サービス内容や提供時間、自治体によって大きく異なります。費用だけで判断するのではなく、提供されるサービス内容とのバランスを綿密に検討することが大切です。
例えば、あるデイサービスでは、個別機能訓練に力を入れている一方で、別のデイサービスでは、集団レクリエーションを重視しているなど、施設によって提供するサービスの重点が異なります。ご本人の状態や希望に合ったサービスが提供されているか、しっかりと確認しましょう。
具体的には、以下のようなサービス内容が提供されているか確認し、費用とのバランスを見て総合的に判断することが重要です。
また、介護保険の適用範囲や自己負担額についても事前に確認しておきましょう。費用の内訳をしっかりと把握し、予算内で適切なサービスを選ぶことが重要です。
デイサービスを選ぶ際には、自宅からの距離やアクセスの良さを考慮することも非常に重要です。ご家族が無理なく通える範囲にある施設を選ぶことで、通所のための負担を軽減し、継続的な利用を促進することができます。
送迎サービスの有無も重要なポイントです。送迎サービスを利用することで、天候に左右されずに安全に通うことができます。送迎範囲や送迎車の車種(車椅子対応など)、付き添いの有無なども確認しておきましょう。
デイサービスは、ご本人が一日を過ごす場所であり、スタッフとの関わりがご本人の心身の状態に大きな影響を与えます。実際に施設に見学に行き、スタッフが利用者にどのように接しているか、施設全体が明るく清潔で、どのような雰囲気かを確認しましょう。
スタッフの認知症ケアに関する知識や経験、そして、認知症の方への共感と敬意を持った対応は、質の高いケアを提供するために不可欠です。認知症の症状は多様であり、適切な対応には専門的な知識とスキルが求められます。スタッフの研修体制や資格の有無なども確認しておくと安心です。
また、施設の雰囲気も重要です。落ち着いた雰囲気の中で過ごせるか、他の利用者との交流が促進されるような環境か、ご本人がリラックスして過ごせる空間かどうかを確認しましょう。
デイサービスでは、レクリエーションや機能訓練など、さまざまなケアが提供されています。ご本人の状態や好みに合ったケアが提供されているかを確認しましょう。身体機能の維持・向上を目的とした機能訓練や、認知機能の低下予防のためのレクリエーション、そして、社会的な交流の機会などが提供されているかを確認することが大切です。
また、施設の実績や評判も参考にすることができます。地域の高齢者支援センターやケアマネジャーに相談したり、インターネットで口コミを調べたりすることで、施設の評判やサービスの質をある程度把握することができます。
近年、肺炎のような感染症を経験した高齢者では、認知機能の低下リスクが高まるという研究報告もあります。これは、感染症による身体的なストレスや炎症反応が脳に影響を与えるためと考えられています。認知症予防の観点からも、適切なケアを提供してくれるデイサービスを選ぶことが重要です。
認知症と診断されたご家族のケアを考える際に、費用や手続きについて不安を抱かれるのは当然のことです。ここでは、認知症対応型デイサービスの利用に関する費用と手続きについて、医療現場の視点も交えながら、わかりやすくご説明します。介護保険の適用範囲や自己負担額、利用開始までの流れ、費用の軽減制度、そして相談窓口についても詳しく解説しますので、ぜひ今後の生活設計にお役立てください。
認知症対応型デイサービスは、要介護1~5の認定を受けた方が利用できます。要支援1・2の方も、介護予防認知症対応型通所介護というサービスを利用できる場合があります。これらのサービスは介護保険が適用されるため、自己負担額は原則1割となります。ただし、所得に応じて2割または3割負担となる場合もあります。
ご本人の経済状況によって負担割合が変わるため、ご家族の負担も大きく変わってきます。詳細な条件は市区町村によって異なる場合があるため、窓口でご確認ください。
負担割合 | 対象者 |
1割負担 | 市町村民税非課税世帯の方 |
2割負担 | 一般所得の方(単身世帯で年収約280万円以上の方など) |
3割負担 | 現役並みの所得のある方(単身世帯で年収約340万円以上の方など) |
自己負担額以外にも、おやつ代やおむつ代、特別なレクリエーション費用などの実費がかかる場合があります。これらの費用は施設によって異なるため、事前に各事業所へ問い合わせることが重要です。
利用開始までの流れ
認知症対応型デイサービスの利用開始までの流れは、複数のステップがあり、戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。大きく分けて以下のようになります。
利用開始までには、1ヶ月から2ヶ月程度かかる場合もあるので、早めに手続きを始めましょう。
費用の軽減制度
認知症対応型デイサービスの利用には、費用の軽減制度が設けられています。費用の負担を軽減する制度には、以下のようなものがあります。
費用の軽減制度は、経済的な負担を軽減する上で非常に重要な役割を果たします。利用を検討する際には、これらの制度について詳しく調べておくことをおすすめします。窓口や相談機関で具体的な情報を得ることができます。
相談窓口と利用相談の方法
認知症対応型デイサービスの利用に関する相談は、様々な窓口で受け付けています。どこへ相談すれば良いかわからない場合は、以下の窓口を参考にしてください。
まずは当施設まで、お気軽にご相談ください。専門家による適切なアドバイスを受けることで、ご本人やご家族にとって最適なサービスを選択できるはずです。
まとめ
認知症対応型デイサービスは、認知症の方々が住み慣れた地域で、自分らしく穏やかに生活を送るための心強い味方です。専門的なケアや少人数制、個別ケアプランに基づいたサービス提供、症状緩和に繋がるレクリエーションや機能訓練、そして緊急時対応体制など、様々な特徴があります。
デイサービス選びの際は、費用とサービス内容のバランス、立地や送迎サービス、スタッフの対応や施設の雰囲気、そしてケアの内容と実績を考慮しましょう。費用については介護保険が適用され、自己負担は原則1割ですが、所得に応じて負担割合が変動します。費用の軽減制度も活用できますので、お住まいの市区町村の窓口に相談してみましょう。
利用開始までの流れは、まず医療機関で認知症の診断を受け、市区町村に要介護認定の申請を行います。その後、認定調査を受け、要介護度が決定されたらケアプランを作成し、デイサービス事業所と契約します。
認知症はご本人だけでなくご家族にとっても大きな不安を伴うものです。しかし、適切なデイサービス選びと利用によって、認知症になっても安心して生活を送ることが可能になります。まずは、お近くの相談窓口に相談し、情報収集から始めてみてください。きっと、あなたに合ったデイサービスが見つかるはずです。
お問い合わせは 054-252-0625 までお電話ください。
大石内科循環器科デイサービスセンター(認知対応型)
通所リハビリテーション
居宅介護支援センター
420-0839
静岡市葵区鷹匠2-6-1
054-252-0625
参考文献
追加情報
[title]: A meta-analysis update evaluating the treatment effects of donepezil alone versus donepezil combined with memantine for Alzheimer’s disease.
ドネペジル単剤療法とドネペジル・メマンチン併用療法のアルツハイマー病治療効果に関するメタ分析アップデート 【要約】
[title]: Exploring novel therapeutic strategies: Could psychedelic perspectives offer promising solutions for Alzheimer’s disease comorbidities?
新規治療戦略の探求:サイケデリックスの視点はアルツハイマー病の合併症に対する有望な解決策を提供できるか? 【要約】
[title]: Microbial diversity and fitness in the gut-brain axis: influences on developmental risk for Alzheimer’s disease.
【要約】
[title]: Does pneumonia increase the risk of dementia and cognitive decline? A systematic review and meta-analysis.
肺炎と認知症・認知機能低下リスクの関連性に関する系統的レビューとメタ分析 【要約】