大石内科循環器科医院

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動悸

「心臓がドキドキする」「脈が飛ぶ」「胸が締め付けられる」などの症状に不安を感じたことはありませんか? 激しい運動後や緊張したときに感じる動悸は、体が正常に機能している証拠です。安静時にも続く動悸は、重大な病気の可能性があります。

この記事では、動悸の原因になる不整脈や狭心症、心不全といった病気から、貧血や甲状腺疾患といった心臓以外の病気まで、さまざまな可能性を現役医師の経験を交えて解説します。 家庭でできる対処法や、医療技術を用いた治療法についても紹介します。ご自身の症状と照らし合わせながら、不安を解消し、健康管理にお役立てください。

動悸とは心臓の拍動が感じられる状態

動悸は、心臓の拍動が感じられる状態のことを指します。人は緊張や興奮、運動をすると、脈が早くなって「動悸」を感じます。動悸は、生理的な現象のため、心配する必要はありません

動悸の中には疾患が隠れている可能性があり注意が必要です。運動時や就寝時、安静時など一時的に起こる場合もあり、さまざまなタイプがあります。心拍が早い・遅い、心拍を強く感じる、大きく感じる、脈が飛ぶ、乱れるなどの場合は治療が必要なケースが多く見られます。

治療の必要のない場合もありますが、心臓の突然死につながるような不整脈もあるため、決して自己判断せず、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けましょう。

動悸の種類

動悸にはさまざまな種類があり、症状や原因が異なります。動悸を感じたときは、まずその症状や状況を冷静に観察し、必要に応じて専門医の診断を受けることが大切です。動悸の主な種類と動悸に関連する症状、原因を詳しく紹介します。

脈が速くなる

脈が速くなる動悸は、「頻脈」と呼ばれ、安静時に脈拍が1分間に100回を超える状態です。心臓がドキドキと早く鼓動しており、マラソンを走った後のように息が上がり、胸がドキドキする感覚です。原因としては、運動や緊張、ストレス、発熱、貧血、脱水症状などさまざまなものがあります。バセドウ病などの甲状腺の病気や、不整脈などの心臓の病気も原因になることがあります。若い女性に多い貧血が原因で頻脈になるケースをよく見かけます。

脈が遅くなる

脈が遅くなる動悸は、「徐脈」と呼ばれ、安静時に脈拍が1分間に60回未満の状態です。心臓の鼓動がゆっくりになり、力強さがなくなっているように感じることがあります。脈が遅くなると、脳や体全体への血液供給が不足し、めまいやふらつき、息切れ、失神などを引き起こす可能性があります。

原因としては、加齢による心臓の機能低下や、洞不結節症候群などの不整脈、甲状腺機能低下症などが挙げられます。一部の薬の副作用で徐脈が起こることもあります。高齢の患者さんで、徐脈によってめまいを起こし、転倒して骨折してしまうケースも少なくありません。

脈が飛ぶ、不規則になる

脈が飛ぶ、不規則になる動悸は、「期外収縮」と呼ばれ、脈のリズムが乱れる状態です。心臓が一瞬止まったように感じたり、ドキンと強く脈打つように感じたりします。健康な人でも期外収縮が起こることがありますが、頻繁に起こる場合は、心臓の病気のサインである可能性がありす。

実際に期外収縮を自覚するのは、全体の2割程度と言われていますが、自覚症状が強い方にとっては大きな不安です。原因としては、ストレスや疲労、睡眠不足、カフェインやアルコールの過剰摂取などが挙げられます。心筋梗塞や弁膜症などの心臓の病気も原因になることがあります。

胸がドキドキする、締め付けられる

胸がドキドキする締め付けられるような感覚を伴う動悸は、心臓の病気のサインである可能性が高いです。狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患では、心臓の筋肉に十分な血液が供給されなくなるため、胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどの症状が現れます。他にも、めまいや失神を伴う場合は、緊急性の高い状態である可能性があります。

小児の場合、胸痛、動悸、失神は、突然死の危険性もあるため注意が必要です。保護者は、お子さんの様子をよく観察し、少しでも異変を感じたらすぐに医療機関に相談することが大切です。

動悸は身体の異常やストレスのサインであることも多いため、「いつ」「どのような状況で」起こったのかを記録することが診断の手助けになります。動悸に伴う他の症状(めまいや胸痛、息切れなど)がある場合には、速やかに医師に相談することが重要です。

動悸に伴う注意が必要な症状

動悸は日常的な要因による一時的なものから、重大な疾患の兆候になる場合までさまざまです。動悸に加えて他の症状が見られる場合は注意が必要です。以下に、動悸に伴う注意が必要な症状について解説します。

不整脈(心房細動、心室頻拍など)

不整脈は、心臓のリズムが乱れる病気です。心臓は、規則正しいリズムで収縮と弛緩を繰り返すことで全身に血液を送っていますが、リズムが乱れると、脈が速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)、飛ぶ(期外収縮)場合があります。

代表的な症状として、心房細動や心室頻拍などがあります。心房細動は、心臓の上部にある心房が細かく震えるように動き、血液を効率的に送り出せなくなる状態です。心室頻拍は、心臓の下部にある心室が異常に速く収縮する状態で、重症の場合、突然死につながる危険性もあります。

不整脈は加齢とともに発症率が高くなる疾患です。特に、高血圧や糖尿病、心臓弁膜症などの基礎疾患がある方は注意が必要です。
>>不整脈とは?症状や原因、治療薬について専門医が解説

冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)

心臓は、冠動脈という血管から酸素や栄養を受け取っています。冠動脈疾患は、冠動脈が動脈硬化などで狭くなったり、詰まったりする病気です。代表的な症状として、狭心症や心筋梗塞などがあります。狭心症は、冠動脈が狭くなることで心臓に十分な血液が送られなくなり、胸の痛みや圧迫感などの症状が現れます水道管が古くなって細くなり、水の流れが悪くなるようなイメージです。

心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉の一部が壊死する病気です。水道管が完全に詰まってしまい、水が全く流れなくなってしまう状態です。冠動脈疾患は、動悸だけでなく、胸の痛みや呼吸困難を伴うことが多く、放置すると命に関わることもあります。

心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を果たしていますが、ポンプの力が弱くなると、体が必要とするだけの血液を送り出せなくなり、息切れやむくみ、動悸などの症状が現れます。井戸ポンプが古くなってしまい、十分な水を汲み上げられなくなるような状態です。

心不全は、不整脈や冠動脈疾患、高血圧などが原因で起こることがあります。高齢者や持病のある方に多くみられる病気で、不整脈誘発性心筋症(AIC)のように、不整脈が心不全を引き起こすケースもあります。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺ホルモンは体の代謝を活発にする働きがありますが、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、代謝が異常に活発になり、動悸や息切れ、体重減少、発汗などの症状が現れます。

甲状腺機能亢進症は、バセドウ病などの病気が原因で起こることがあります。比較的女性に多く、適切な治療が必要です。

肺梗塞

肺梗塞は、肺動脈に血栓(血液の塊)が詰まることで起こる病気です。血栓によって肺への血流が遮断されると、酸素を取り込めなくなり、激しい呼吸困難や胸の痛みを引き起こします。肺梗塞はエコノミークラス症候群とも呼ばれ、飛行機の座席など狭い場所で長時間同じ姿勢でいることで発症リスクが高まります。

肺動脈に流れて詰まることが原因で、足の静脈に血栓ができやすいのが特徴です。動悸とともに症状が出ている場合には、早急に対応が必要な場合が考えられます。

動悸は、命に関わる病気のサインである可能性もあります。決して自己判断せず、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けましょう。

動悸の検査と診断

動悸の原因は実にさまざまで、心臓自身の病気だけでなく、他の病気や生活習慣、精神的な要因が影響することもあります。心臓のリズムが乱れる不整脈、心臓のポンプ機能が低下する心不全、心臓の血管が狭くなる狭心症、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病、貧血など、多岐にわたります。

動悸の原因を特定し、適切な治療につなげるためには、さまざまな検査が必要になります。動悸の原因を探るための検査と診断のプロセスについて解説します。

問診・診察・身体所見

動悸の検査は、問診から始まります。医師は、患者さんの症状について詳しく話を聞きます。いつから動悸が始まったのか、どのような時に起こるのか、他にどのような症状があるのかなど、些細なことでも伝えることが重要です。

問診に続いて、診察と身体所見の確認が行われます。医師は聴診器を使って心臓の音や呼吸の音を聞き、血圧や脈拍を測定します。心臓弁膜症があると「しゅっしゅっ」という雑音が聞こえることがあります。バセドウ病の患者さんは、脈拍が速く、手の震えが見られることがあります。

心電図検査・ホルター心電図検査

心電図検査は、心臓の電気的な活動を記録する検査です。胸や手足に電極を貼り付けて、心臓の鼓動のリズムや速さを調べます。検査によって、不整脈など心臓のリズムの異常を検出できます。心臓の電気信号をキャッチするアンテナのように、心臓の活動状態をリアルタイムで映し出すのです。

ホルター心電図検査は、小型の記録装置を身につけて、24時間心臓の動きを記録する検査です。心電図検査では捉えられないような、たまに起こる不整脈も検出できます。日常生活での心臓の状態を詳しく知ることができるため、動悸の原因を特定するのに役立ちます。

血液検査・心臓超音波検査・その他

血液検査では、貧血や甲状腺の病気など、動悸に関係する病気がないかを調べます。貧血があると心臓が頑張って血液を送り出そうとするため、動悸が起こりやすくなります。甲状腺機能亢進症では、代謝が活発になることで心臓への負担が増加し、動悸が生じることがあります。

心臓超音波検査は、超音波を使って心臓の形や動きを見る検査です。心臓の弁の状態や、心臓の筋肉がどれくらい動いているかなどを調べることができます。心臓の内部構造を映し出すカメラのように、心臓の形態や機能を視覚的に捉えられます。

その他にも、必要に応じて胸部レントゲン検査や運動負荷心電図検査などを行うこともあります。検査によって、動悸の原因が心臓の病気によるものなのか、心臓以外の病気や生活習慣によるものなのかを詳しく調べ、適切な治療につなげます。不整脈誘発性心筋症のように、不整脈が原因で心不全症状を引き起こしている場合もあります。

冠動脈疾患の患者さんの場合、心房細動を合併しているケースもあり、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、多角的な検査が必要です。検査を通じて、患者さんにとって最適な治療法を選択することが可能になります。

動悸の対処法と治療法

診断が進み、動悸の原因が特定されたら、適切な対処法や治療法を選択することが重要です。日常生活でできる動悸の対処法から、専門的な治療方法までを詳しくご紹介します。

家庭でできる対処法(安静、水分補給、呼吸法など)

動悸が起きたとき、まずは落ち着いて対処することが重要です。過度な不安は、自律神経のバランスを崩し、動悸をさらに悪化させる可能性があります。おすすめの対処法は、以下のとおりです。

  • 安静にする
    楽な姿勢で座るか横になり、目を閉じて深呼吸をしましょう。瞑想をしているかのように、心を落ち着かせることが大切です。騒音や周囲の刺激が気になる場合は、耳栓やアイマスクを使用するのも効果的です。
  • 水分補給
    脱水症状は動悸を引き起こすことがあるため、常温の水や白湯をゆっくりと飲みましょう。冷たい水を一気に飲むと、胃腸に負担がかかり、逆効果になる可能性があります。スポーツドリンクなども有効ですが、糖分の摂りすぎには注意が必要です。
  • 呼吸法
    深くゆっくりとした呼吸を繰り返すことで、心拍数を落ち着かせる効果が期待できます。4秒かけて鼻から息を吸い込み、6秒かけて口からゆっくりと吐き出す腹式呼吸は、自律神経のバランスを整える効果があるとされています。ヨガや瞑想の呼吸法もおすすめです。
  • ツボ押し
    手首の内側にある「内関(ないかん)」というツボは、動悸や吐き気を鎮める効果があります。親指で優しく押す、あるいは米粒を貼り付けて刺激しましょう。

対処法を試しても動悸が治まらない、あるいは強い息苦しさやめまい、胸の痛みなどを伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。失神を伴う場合は、緊急性の高い状態である可能性があります。

薬物療法(β遮断薬、抗不整脈薬など)

動悸の原因が不整脈や高血圧、甲状腺機能亢進症などの病気の場合は、薬物療法が必要になります。薬物療法は、動悸の根本原因に対処することで、症状の改善や再発防止を目指します。

  • β遮断薬
    心臓の拍動を抑制し、脈拍をゆっくりにする効果があります。β遮断薬は、心臓のブレーキのような役割を果たし、過剰な興奮を抑えることで動悸を軽減します。
  • 抗不整脈薬
    不整脈の種類に合わせて、心臓のリズムを正常に戻す薬が処方されます。例えば、心房細動の治療には、アミオダロンなどが用いられます。アミオダロンは、心房細動による動悸を抑制するだけでなく、心不全のリスクを低減させる効果も期待できます。不整脈誘発性心筋症(AIC)の治療においても、β遮断薬やアミオダロンなどの薬剤を用いて不整脈をコントロールすることが重要です。AICとは、持続性の不整脈が心筋に負担をかけ、心臓のポンプ機能を低下させる病気です。
  • 甲状腺ホルモン抑制剤
    バセドウ病などの甲状腺機能亢進症が原因で動悸が起きている場合は、甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬が使用されます。甲状腺ホルモンは、代謝を活発にする作用がありますが、過剰に分泌されると心臓に負担がかかり、動悸が生じやすくなります。

薬の種類や服用量は、患者さんの状態に合わせて医師が決定します。自己判断で薬の服用を中止したり、量を変更したりすることは危険ですので、必ず医師の指示に従ってください。

高血圧について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>大石内科循環器科医院|高血圧の基礎知識・症状・治療について

カテーテルアブレーション

薬物療法で効果がない場合や、不整脈の原因が特定できる場合は、カテーテルアブレーションという治療法が選択肢になります。カテーテルと呼ばれる細い管を血管を通して心臓まで挿入し、不整脈の原因である異常な電気信号を発する部位を焼灼する治療法です。

カテーテルアブレーションは、まるで心臓の電気回路のショート部分を修復する手術のように、不整脈の根本的な治療を目的としています。

ペースメーカー植え込み

徐脈と呼ばれる、脈拍が異常に遅いタイプの不整脈がある場合は、ペースメーカーの植え込みが必要になることがあります。ペースメーカーは、心臓の拍動を一定のリズムに保つための小さな機器です。まるで、心臓の指揮者のように、規則正しいリズムを刻むことで、徐脈によるめまいや失神などの症状を予防します。

心臓外科手術

心臓弁膜症や先天性心疾患など、心臓の構造に異常がある場合に、外科手術が必要になることがあります。心臓弁膜症は心臓の弁が正常に機能せず、血液の流れが阻害される病気です。外科手術では、心臓弁膜の修復、あるいは人工弁への置換が行われます。心臓の扉の修理、あるいは交換をする手術のように、心臓の機能を回復させることを目的としています。

動悸は、心臓自身の病気だけでなく、貧血や甲状腺疾患、更年期障害、ストレスなど、さまざまな原因で起こることがあります。動悸を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることが大切です。

まとめ

動悸は、誰にでも起こりうる症状です。激しい運動後や緊張したときなど以外に安静時にも動悸が続く場合があります。安静時に胸の痛み、息苦しさ、めまい、失神などを伴う場合は、心臓病やその他の病気が隠れている可能性があります。

動悸の原因はさまざまで、心臓の病気以外にも、貧血や甲状腺の病気、ストレスなどが影響していることもあります。自己判断せずに、医療機関を受診して適切な検査を受けることが大切です。動悸が起きたときは、まず落ち着いて安静にし、水分補給をしましょう。深呼吸をすることも効果的です。症状が改善しない場合は、医療機関に相談しましょう。

当院は、不整脈治療を得意としている循環器専門医がいます。動悸症状で不安な方、お悩みの方、お困りの方はぜひご相談ください。

参考文献.

  1.  Sossalla S and Vollmann D. “Arrhythmia-Induced Cardiomyopathy.” Deutsches Arzteblatt international 115, no. 19 (2018): 335-341.
  2. 小児における胸痛、動悸、失神:突然死を予防するために
  3. 冠動脈疾患患者における心房細動の同定と予測:ベイズネットワークに基づく多施設後ろ向き研究

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