健康診断の結果を見て、血糖値の項目が気になったことはありませんか?現代社会において、血糖値の乱高下は、静かに私たちの健康を脅かす大きなリスク要因となっています。
血糖値が正常範囲から外れると、糖尿病などの生活習慣病だけでなく、動脈硬化や心血管疾患といった深刻な病気を引き起こすリスクが高まることがあります。自覚症状がないまま進行し、将来的に視力低下や腎機能障害などの合併症につながる可能性もあります。
この記事では、血糖値の正常範囲や異常値が引き起こすリスクや具体的な対策方法を解説します。ご自身の健康状態を理解し、未来の健康を守るためにも、ぜひ読み進めてください。
大石内科循環器科医院では、糖尿病の検査も実施しています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の量のことです。ブドウ糖は、私たちが体を動かすための大切なエネルギー源です。血糖値が、常にバランス良く保たれていることが健康維持には大切です。血糖値の正常範囲を知るための3つのポイントは以下のとおりです。
健康な人の場合、空腹時血糖値は70~109mg/dL、食後2時間血糖値は140mg/dL未満が正常範囲とされています。「空腹時血糖値」とは、何も食べていない状態での血糖値です。「食後血糖値」とは、ご飯やパンなどを食べた後に、血糖値がどれくらい上がるかを示す値です。
食後は、血液中のブドウ糖が増えるため、血糖値は一時的に上昇します。健康な人であれば、インスリンというホルモンがうまく働き、血糖値を適切な範囲に戻してくれます。インスリンは、膵臓で作られるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませ、エネルギーとして利用したり、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えたりする役割を担っています。
インスリンの働きが弱い・分泌量が少ない場合に、血糖値は高いままになってしまいます。高血糖の状態が続くと、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、糖尿病の診断や経過観察に用いられる、過去1~2か月間の平均的な血糖値の状態を表す指標です。赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質にブドウ糖が結合した割合を示しています。過去数か月間の血糖コントロールの状態を振り返ることができます。
健康な人のHbA1c値は、5.5%以下です。HbA1cが6.5%以上になると、糖尿病型と診断されます。HbA1cは、血糖値がどれくらいコントロールできているかを知るうえで重要な指標です。血糖値は、食事や運動など、日々の生活によって変動しますが、HbA1cは長期的な血糖値のコントロール状態を反映するため、糖尿病の診断や治療効果の判定に用いられます。
最近の研究(Kandartzis et al., 2023)では、糖尿病予備群の段階で、すでにインスリン抵抗性とインスリン分泌機能障害が存在していることが示されています。インスリン分泌機能不全または優勢なインスリン抵抗性を示すグループは、糖尿病および心血管リスクが高いことがわかっています。
年齢や状況によって血糖値が変化する可能性があることを知っておくことも大切です。年齢による血糖値の基準値の変化は少ないですが、高齢者の場合は、低血糖になりやすい傾向があります。加齢に伴い、肝臓や腎臓の機能が低下し、血糖値を維持する能力が弱まることや食事量の減少、薬剤の影響などが関係しています。
妊娠中は、ホルモンバランスの変化などにより、血糖値が変動しやすいため、注意が必要です。妊娠糖尿病は、母体と胎児の両方に悪影響を与える可能性があるため、適切な管理が必要です。
ストレスや睡眠不足、特定の薬剤の影響などによっても、血糖値は変動する場合があります。ストレスを感じると、血糖値を上げるホルモンが分泌され、血糖値が上昇します。睡眠不足も血糖値のコントロールを悪くする要因になります。
血糖値の異常値がもたらすリスクについて、以下の2つを解説します。
高血糖の状態が続くと、血管の内壁に負担がかかり、傷つきやすくなることが知られています。血管が傷つくことで、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。主な病気として、糖尿病や動脈硬化が挙げられます。
糖尿病は、血糖値を下げる働きをするインスリンというホルモンの分泌量が不足したり、働きが悪くなったりすることで発症します。初期の糖尿病では自覚症状がない場合も多いです。気づかないうちに病気が進行し、合併症を引き起こしてしまう可能性があります。
動脈硬化は、血管の壁が厚く硬くなる病気です。高血糖は動脈硬化の進行を早め、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こすリスクを高めます。血管が硬くなると、血液の流れが悪くなり、さまざまな臓器に酸素や栄養が行き渡らなくなります。結果として、心臓や脳などの重要な臓器に深刻なダメージを与えてしまいます。
他にも、高血糖は、神経障害や網膜症、腎症などの合併症のリスクも高めます。合併症は、生活の質を著しく低下させる可能性があります。神経障害によって手足のしびれや痛みが出たり、網膜症によって視力が低下したり、腎症で人工透析が必要になるケースもあります。高血糖は放置せずに、適切な対策をとることが重要です。
低血糖とは、血液中のブドウ糖の濃度が低すぎる状態のことです。低血糖になると、脳や体に必要なエネルギーが不足し、さまざまな症状が現れます。軽度の低血糖では、以下の症状がみられます。
重度の低血糖になると、意識障害や痙攣、昏睡などの状態に陥ることがあります。低血糖の症状が現れた場合は、適切な対応が必要です。低血糖状態では脳へのエネルギー供給が不足し、正常な機能が一時的に低下することがあります。
低血糖は、糖尿病の治療薬を使用している人や、インスリンを分泌する腫瘍を持っている人などに起こりやすいです。激しい運動後や食事を抜いたときも、低血糖になることがあります。低血糖の症状が現れたら、すぐにブドウ糖を摂取することが大切です。ブドウ糖を含む食品としては、砂糖や飴、ジュースなどが挙げられます。
血糖値の異常は自覚症状が現れにくい場合もあるため、定期的な検査を受けることが大切です。ご自身の年齢や持病なども考慮しながら、医師と相談し適切な検査を受けるようにしましょう。糖尿病予備群と診断された場合は、糖尿病への進行を予防するための適切な対策が必要です。
以下の記事では、低血糖の重症度別の症状や、いざというときの緊急時の対処法を7つのポイントに分けてわかりやすく解説しています。日頃からの備えとして、ぜひチェックしておきましょう。
>>【要注意】糖尿病の低血糖症状と緊急時の対処法7つ
血糖値をコントロールし、正常にするための3つの対策を紹介します。
食生活の改善は、血糖値コントロールの土台となる重要な要素です。食生活改善に向けた取り組みとして、以下を意識しましょう。
食物繊維は、糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ効果があります。腸内環境を整える働きもあり、便秘の解消にも役立ちます。食物繊維は、野菜や果物、海藻、きのこ類などに多く含まれています。野菜炒めやきのこのソテー、海藻サラダなどを献立に取り入れると、自然に食物繊維を摂取できます。
朝食に白米ではなく、玄米やオートミールを選んだり、パスタを全粒粉パスタに置き換えたりなど、少しの工夫でGI値(グリセミック・インデックス)を下げることができます。GI値とは、食品が血糖値を上昇させる速さを示す指標です。
GI値が低い食品は、血糖値の上昇が緩やかで、インスリンの分泌も抑えられます。白米やパンなどの精製された穀物よりも、玄米や全粒粉パンなどを選ぶようにしましょう。
最近の研究では、1日の食事のリズムや、食事中の食品を食べる順番も血糖値コントロールに影響を与えることがわかってきています。昼食と午後の早い時間にカロリーと炭水化物を摂取し、遅い夕食を避けます。1日の食事回数と時間を一定に保つことが、血糖値の安定につながることも示唆されています。
野菜や海藻、きのこなどの食物繊維を多く含む食品から食べ始めます。次に肉や魚などのタンパク質を摂取し、最後にご飯やパンなどの炭水化物を食べることで、食後の血糖値の上昇を緩やかにできます。
こうした食事の工夫に加えて、日々の生活習慣を見直すことで、さらに効果的な血糖値コントロールが期待できます。以下の記事では、血糖値を下げるための7つのポイントを詳しく解説していますので、実践の参考にしてみてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
適度な運動は、血糖値をコントロールするうえで欠かせません。運動によって筋肉が糖を取り込むため、血糖値が下がります。運動はインスリンの働きを良くし、血糖値のコントロールを改善する効果も期待できます。
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動に加えて、筋力トレーニングも効果的です。筋トレは筋肉量を増やし、基礎代謝を向上させるため、より効率的に血糖値をコントロールできます。運動は、1回に長時間行うよりも、短い時間でも毎日続けることが大切です。
30分のウォーキングを週5日行ったり、10分の筋トレを毎日行ったりするなど、無理なく続けられる方法を選びましょう。日常生活の中で、エスカレーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、こまめに体を動かす習慣を身につけることも効果的です。
ストレスは血糖値を上昇させる要因の一つです。ストレスを感じると、コルチゾールなどのホルモンが分泌され、血糖値が上昇します。ストレスをため込まないためには、質の良い睡眠を十分にとることが重要です。睡眠不足はストレスを増大させ、血糖値のコントロールにも悪影響を及ぼします。質の良い睡眠には、以下の工夫が効果的です。
自分なりのリラックス法を見つけることも大切です。具体例は以下のとおりです。
継続的な血糖値コントロールには、食生活の改善と適度な運動、ストレス管理の3つの柱をバランスよく実践することが重要です。ご自身の血糖値の状態を把握するために、定期的な血糖値測定も忘れずに行いましょう。
血糖値をコントロールすることは、健康な毎日を送るうえで重要です。血糖値のコントロールに役立つ3つの対策は以下のとおりです。
食物繊維や低GI食品を積極的に摂り入れ、適度な運動を習慣化し、質の高い睡眠を確保することで、血糖値の乱高下を防ぎ、安定させることができます。血糖値が気になる、または健康診断で指摘された場合は、かかりつけ医や医療機関に相談することをおすすめします。
医師のアドバイスを参考にすることで、ご自身に適した対策を検討することができます。毎日の生活習慣を少し見直すことで、血糖値をコントロールし、健康で充実した日々を送りましょう。
血糖値の状態を把握するためには、健康診断でチェックすべき数値を理解しておくことが大切です。以下の記事では、糖尿病の早期発見に役立つ健診項目について詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント
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