糖尿病は心筋梗塞のリスクを高める危険因子です。高血糖の状態が続くと、血管の内壁にダメージが蓄積し、動脈硬化を進行させ、血管の閉塞につながる可能性があります。本記事では以下について解説します。
この記事を読むことで、心筋梗塞リスクを回避するための予防法がわかります。
大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
糖尿病は、現代社会の食生活や生活習慣の変化によって、5人に1人が糖尿病のリスクを抱えていると言われています。心筋梗塞は、心臓の筋肉に栄養を送る冠動脈が詰まることで、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。糖尿病の方は、そうでない方に比べて、心筋梗塞になるリスクが2~3倍も高くなります。
糖尿病が心筋梗塞のリスクを高めるメカニズムは、血管へのダメージが主な原因です。高血糖の状態が続くと、血管内皮細胞が障害を受け、炎症反応が生じやすくなり、血管を硬く脆くし、動脈硬化を進めます。
動脈硬化とは、血管の壁にコレステロールなどの脂肪が溜まり、血管が狭く硬くなる状態です。糖尿病の方は、汚れが溜まりやすく、血管が詰まりやすくなります。詰まりが心臓の血管で起こると、心筋梗塞につながります。
2024年の研究では、2型糖尿病で最近心筋梗塞を発症した患者さんにおいて、コルヒチンという薬を低用量で服用すると、心血管のリスクを減少させる可能性が示唆されています。
高血糖は、血管内皮細胞に悪影響を及ぼします。血管の内側の細胞は、高血糖状態に長期間さらされると、細胞機能の障害が生じます。傷ついた血管は、修復しようとしますが、コレステロールが血管壁に溜まりやすく、動脈硬化を促進してしまいます。
高血糖は血液自体にも悪影響を及ぼします。血液の粘度が上昇し、血流が低下すると、血管閉塞のリスクが高まり、心臓への酸素供給が減少する可能性があります。
高血糖は進行するまで自覚症状が乏しい場合もありますが、体にはさまざまなサインが現れることがあります。以下の記事では、高血糖の初期症状や見逃しやすい危険信号について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
>>高血糖の症状と危険信号を解説!早期発見のためのポイント
糖尿病は、高血圧や脂質異常症といった合併症を引き起こしやすく、心筋梗塞のリスクを高めます。高血圧は、血管に大きな負担をかけ、血管を傷つけやすくします。脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が増え、動脈硬化を加速させます。
糖尿病の合併症の一つである神経障害も、心筋梗塞のリスクを高める要因です。神経障害によって、心筋梗塞の典型的な症状である胸の痛みを感じにくくなる「無痛性心筋梗塞」が起こることがあります。痛みを感じないため、異常に気づかず、治療が遅れる危険性があります。
心筋梗塞に影響する要因は以下のとおりです。
糖尿病はさまざまな要因が複雑に絡み合い、心筋梗塞のリスクを高めています。糖尿病をしっかりと管理し、合併症を防ぐことが、心筋梗塞の予防につながります。
中でも高血圧は多くの人に見られ、かつ自覚症状が少ないため注意が必要です。以下の記事では、高血圧がなぜ起こるのか、その原因や予防・改善のための対策について、わかりやすく解説しています。
>>高血圧はなぜ起こる?原因と対策をわかりやすく解説
心筋梗塞の症状と対処法について、以下の3つを解説します。
心筋梗塞の初期症状は、緊急性の高いものから比較的軽いものがあります。症状は、心臓の働きが弱まり、全身の血液循環が悪くなっていることを示しています。心筋梗塞の症状は以下のとおりです。
症状は、必ずしもすべて現れるとは限りません。症状が軽い場合や、自覚症状がない場合もあります。糖尿病の患者さんは、神経障害のために痛みを感じにくく、無痛性心筋梗塞を起こす可能性もあるため、注意が必要です。狭心症と同様に、運動や興奮がきっかけで症状が現れることもありますが、安静時にも発作が起こります。
心筋梗塞の症状は、胸の痛みだけではありません。胸の痛み以外の症状は、息苦しさや冷や汗、吐き気、嘔吐、めまい、失神などがあります。高齢者や女性の場合、胸痛以外の発症が多く、見逃されやすい傾向があります。加齢やホルモンバランスの変化によって、痛みの感じ方が変化することが一因と考えられています。
症状は、狭心症や心臓病でも見られることがあるため、自己判断は危険です。少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関に相談しましょう。
心筋梗塞は、発症から時間が経つほど心臓の筋肉が壊死していくため、迅速な対応が重要です。1990〜2000年代にかけて、急性心筋梗塞による死亡率は最大50%減少が報告されていますが、現在も迅速な対応が求められています。
ご自身や周りの人が心筋梗塞の疑いがある症状を示したら、ためらわずに救急車を呼ぶことが大切です。心筋梗塞は時間との勝負です。救急車を待つ間の対応について、以下の手順を把握しておきましょう。
ニトログリセリンは血圧を下げる作用があるため、低血圧の方は使用を控えましょう。一刻も早い治療開始が、救命率の向上と後遺症の軽減につながります。
心筋梗塞は、迅速な診断と治療が不可欠な緊急性の高い疾患です。一刻も早い適切な処置が、救命率の向上と後遺症の軽減につながります。心筋梗塞の検査と治療方法について解説します。
心筋梗塞の診断は、複数の検査を組み合わせて行います。検査方法は以下のとおりです。
心電図検査は、迅速かつ簡便に実施できるため、最初に行われる検査の一つです。患者さんの症状や状態に応じて、適切な検査が選択されます。
心筋梗塞の治療法は以下のとおりです。
治療後の予後は、心筋梗塞の範囲や重症度、治療までの時間、合併症の有無などによって大きく異なります。早期に適切な治療を受ければ、多くの場合、日常生活に戻れます。心臓に大きなダメージを受けた場合は、心不全などの後遺症が残る可能性があります。
心筋梗塞は再発のリスクもあるため、生活習慣の改善や薬物療法による継続的な管理が必要です。再発予防には、禁煙やバランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理などが重要です。定期的な健康診断を受けて、心臓の状態を把握しておくことが大切です。
心筋梗塞は、命に関わる重篤な疾患ですが、生活習慣の改善でリスクを減らす可能性があります。生活習慣を見直し、心臓の健康維持に努めましょう。心筋梗塞を防ぐ生活習慣について、以下の6つを解説します。
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が増えすぎる病気です。高血糖の状態が続くと、血管の内側が傷つき、動脈硬化が進行します。糖尿病の方は、食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて血糖値のコントロールが重要です。
HbA1c値(血液中のヘモグロビンに結合しているブドウ糖の割合値)を目標値に維持が、合併症のリスクを減らします。適切な血糖コントロールは、心筋梗塞予防だけでなく、網膜症や腎症などの他の合併症の予防につながります。
バランスの良い食事は、健康な身体づくりの基本です。心筋梗塞予防には、以下の3つのポイントが重要です。
野菜や果物には、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。栄養素は、血管を健康に保ち、動脈硬化の予防に役立ちます。1日350g以上の野菜を摂取しましょう。
塩分の摂りすぎは血圧を上昇させ、心臓に負担をかけます。1日の塩分摂取量は6g未満に抑えましょう。加工食品やインスタント食品、外食は塩分が多い傾向があるので注意が必要です。
脂質には、身体に良いものと悪いものがあります。肉類の脂身やバターなどに含まれる飽和脂肪酸は、摂りすぎると悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化を促進します。魚に多く含まれるEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸は、善玉コレステロールを増やし、血管を健康に保つ効果があります。
魚や大豆製品、オリーブオイルなどを積極的に摂り入れましょう。
適度な運動は、血糖値や血圧をコントロールし、血管を丈夫にする効果があります。ウォーキングや軽いジョギング、水泳、サイクリングなどを、週に3回以上、30分程度行いましょう。運動不足は、心筋梗塞や肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクを高めます。日常生活の中で、身体を動かす習慣をつけましょう。
タバコは、血管を傷つけ、動脈硬化を進行させる心筋梗塞の重大な危険因子です。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させます。一酸化炭素は血液中の酸素運搬能力を低下させ、心臓に負担をかけます。
禁煙は、心筋梗塞のリスクを減らすだけでなく、さまざまな病気の予防にもつながります。禁煙は難しい方は禁煙外来などで専門家のサポートを受けましょう。
ストレスは、交感神経を刺激し、血圧や血糖値を上昇させる原因となります。長期間のストレスは、血管に負担をかけ、動脈硬化を促進する可能性があります。ストレスをため込まないためには、自分に合った方法でストレスを解消しましょう。十分な睡眠時間の確保も重要です。
血糖コントロールをより効果的に行うためには、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。以下の記事では、血糖値を下げるために期待できる7つの具体的な方法について紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
心筋梗塞は、初期症状がない場合もあります。糖尿病の方は、神経障害のために痛みを感じにくく、無痛性心筋梗塞を起こす可能性もあるため、注意が必要です。定期的な健康診断で、自分の身体の状態をチェックしましょう。
健康診断では、血糖値や血圧、コレステロール値などを測定し、心筋梗塞の危険因子がないか確認できます。異常が見つかった場合は、早めに医師に相談しましょう。早期発見や早期治療が、心筋梗塞の予後を改善するうえで重要です。
糖尿病と心筋梗塞には密接な関連があります。高血糖は血管内皮細胞を障害し、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞のリスクを高める要因となります。
生活習慣の見直しによってリスクを軽減できる可能性があります。バランスの良い食事や適度な運動、禁煙、ストレスケアなど、日常的な取り組みが心血管疾患の予防に役立ちます。定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につなげることが重要です。
以下の記事では、心筋梗塞の基礎知識から、症状・原因・治療法に至るまで、わかりやすくまとめています。心筋梗塞の予防や早期発見の参考にご活用ください。
>>心筋梗塞について
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