「少し歩いただけで息切れする」「年齢のせいだと思って我慢している」。そんな症状の裏に、実は心不全や肺の病気など命に関わる疾患が隠れていることがあります。加齢による体力低下やストレスなども原因になりますが、息切れは体からのSOSである可能性を見逃せません。
この記事では、高齢者に多い息切れの原因や受けるべき検査・治療法、毎日の生活でできる工夫まで解説します。息切れの正体を理解することで、不安を和らげて、安心して過ごすためのヒントを見つけることができます。
静岡市で息切れにお悩みの方は、大石内科循環器科医院へご相談ください。当院では循環器専門医が心電図や超音波検査、血液検査などを用いて原因を丁寧に調べ、必要に応じた治療や生活改善をサポートします。
息切れは、体が「酸素が足りないよ」と教えてくれるサインです。その裏には、治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。高齢者の息切れの主な原因は以下の5つです。
心臓の病気は高齢者の息切れの代表的な原因であり、放置すれば命に関わることがあります。心臓は全身に血液を送るポンプの役割を担っており、その機能が低下すると酸素が足りなくなり、息切れとして現れます。特に、運動や坂道・階段で強く感じやすいのが特徴です。
主な病気と症状の特徴は次のとおりです。
なかでも不整脈の一種である発作性上室性頻拍(PSVT)は、持病のない方でも突然脈が速くなり、動悸・息切れ・胸の痛みを伴います。一般人口の約1000人あたり2〜3人が経験するとの報告もあり、珍しい病気ではありません。
心臓が原因の息切れは早期対応が重要です。思い当たる症状があれば、迷わず循環器内科を受診してください。
以下の記事では、動悸で病院を受診する目安や検査・治療の流れを詳しく解説しています。
>>動悸で病院に行くタイミングはいつ?受診の目安や検査、治療の流れ
肺の働きが損なわれると、酸素を十分に取り込めなくなり、強い息切れが生じます。特に慢性疾患から感染症、急性の重症病まで幅広く関係するため、早めの対応が重要です。代表的な病気と特徴は、以下のとおりです。
これらは症状や経過が異なるものの、いずれも放置すると重症化します。息切れが日常的に続いたり急に悪化したりした場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
以下の記事では、胸の痛みを部位ごとに分けて原因や考えられる病気について解説しています。
>>胸が痛い!痛む場所(左・右・真ん中)による原因や病気の可能性を解説
息切れの原因は心臓や肺だけでなく、全身のさまざまな臓器に隠れていることがあります。貧血では酸素を運ぶヘモグロビンが不足し、全身が酸素不足に陥って息切れや動悸が起こります。腎臓病では余分な水分が体にたまり、肺に水がしみ出して肺水腫を起こし、呼吸が苦しくなるほか、貧血を悪化させることもあります。
さらに甲状腺機能亢進症では代謝が異常に高まり、心臓に負担がかかって息切れが生じます。顔色の悪さ、むくみ、動悸などの症状も合わせて現れるため、軽視せず受診することが大切です。
以下の記事では、動悸の症状に応じた具体的な対処法や、普段から気をつけたいポイントを解説しています。
>>動悸の対処法を症状別に解説!自宅でできる応急処置と普段から気をつけたいポイント
大きな病気がなくても、加齢に伴う筋力の低下は息切れの大きな原因になります。年齢を重ねると、手足だけでなく横隔膜や肋間筋などの呼吸筋も衰え、呼吸が浅く速くなります。そのため、少し動いただけでも息が上がりやすくなるのです。
特に次のような状態が重なると「フレイル(虚弱)」のサインであり注意が必要です。
フレイルは単なる体力低下ではなく、転倒や病気のリスクを高めます。息切れが「年のせい」と思える場合でも、生活習慣や体調を振り返り、早めの対策をとることが大切です。
体に異常がなくても、強いストレスや不安が息切れを引き起こすことがあります。自律神経のバランスが乱れると、呼吸が浅く速くなり「息が苦しい」と感じるのです。心因性の息切れには、次のような特徴があります。
まずは心臓や肺の病気がないか確認することが大切です。そのうえで不安が強い場合は心療内科など専門的なケアを受けることで、安心して日常生活を送れるようになります。
息切れを診断する主な検査として、以下の4つを解説します。
胸部X線は、心臓や肺の状態を一目で確認できる基本的な検査です。胸にX線をあてて影を写し出すことで、心臓・肺・血管の異常を幅広くチェックできます。胸部X線では、主に次の点を確認します。
シンプルで短時間に行えるため、胸の症状があるときに実施される基本検査の一つです。
心電図は、心臓の電気的な動きを記録し、不整脈や狭心症・心筋梗塞の兆候を調べる基本的な検査です。手足や胸に電極を貼り、拍動に伴って発生する微弱な電気信号を波形として記録します。これにより、脈が速すぎたり乱れたりする「不整脈」の有無や種類を詳しく確認できます。
動悸を伴う息切れの場合、突然脈が速くなる発作性上室性頻拍などを見つけるために重要です。検査は安静時に行うのが一般的ですが、体を動かしながら記録する「運動負荷心電図」を用いることもあります。短時間で痛みもなく、心臓病の早期発見に欠かせない検査です。
血液検査は、息切れの原因を幅広く調べるために欠かせない検査です。腕から少量の血液を採り、体の状態を数値で確認できます。特にBNPという値は、心臓にかかる負担を示す重要な指標で、心不全の診断や重症度の判定に用いられます。ほかにも次のような情報が得られます。
一度の採血で多くの情報が得られるため、原因不明の息切れの精査に効果が期待できます。
呼吸機能検査は、息切れの原因が肺にあるかどうかを確かめる基本的な検査です。鼻をクリップで止め、筒をくわえて息を吸ったり吐いたりすることで、肺の働きを数値化します。特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診断には欠かせず、肺年齢を知ることもできます。測定するのは、主に以下の3点です。
十分な情報が得られない場合は、心臓超音波(エコー)検査やCT検査など、より詳しい検査を追加して診断を深めていきます。
病院で行われる主な治療法は以下のとおりです。
一つひとつの意味を理解することで、安心して治療に臨みましょう。
息切れの治療は、原因に応じた薬物療法が基本です。薬は症状を和らげるだけでなく、病気の進行を抑える役割を担います。効果が出ても自己判断で中止すると、再発や悪化につながるため、必ず医師の指示通りに継続することが重要です。
原因別に使われる主なお薬には以下のものがあります。
心臓疾患では心臓への負担を減らす薬が中心です。肺疾患では、気道を広げたり炎症を抑えたりする薬が有効とされています。貧血では鉄剤を補うことで酸素を運ぶ力を改善します。薬物療法は病気に合わせたオーダーメイドの治療であり、継続こそが回復への第一歩です。
在宅酸素療法(HOT)は、病気の進行によって体の中の酸素が慢性的に不足している場合に行う治療です。自宅に酸素濃縮器を設置し、鼻につけたチューブから酸素を吸入します。治療の目的は、全身に十分な酸素を届けて心臓や臓器への負担を減らし、生活の質を保ちながら長く健康に過ごせるようにすることです。
酸素は燃焼を助ける性質があるため、タバコやストーブ、ガスコンロなど火気の使用には十分な注意が必要です。医療保険の対象となり、高額療養費制度などの支援も利用できるため、費用面が心配な方は医師やソーシャルワーカーに相談することをおすすめします。
息切れを改善するには、体を動かすことをやめないことが大切です。息苦しさを理由に安静を続けると筋力が低下し、息切れが悪化する悪循環に陥ります。この流れを断ち切るのが呼吸リハビリテーションです。専門家が一人ひとりの状態に合わせてプログラムを組み、安全に体を動かす方法を指導します。
主な内容は次のとおりです。
続けることで息切れが軽くなり、動作も楽になります。さらに自信がつき、外出や趣味を楽しむ意欲が戻ることで、生活の質を高めることができます。
病院での治療に加え、毎日の生活で少し工夫するだけでも、息切れは和らげられる可能性があります。ご自宅で今日から始められる、呼吸を楽にする具体的な方法は以下のとおりです。
心不全による息切れを和らげるためには、塩分を控えることが重要です。塩分を摂りすぎると体は水分をため込み、血液量が増えて心臓に大きな負担がかかります。その結果、余分な水分が肺に染み出し「肺うっ血」と呼ばれる状態となり、まるで水中で溺れるような苦しさにつながります。
1日の塩分摂取目標は6g未満です。ラーメンの汁を飲み干すだけで簡単に超えてしまうため、注意が必要です。減塩でもおいしく食べる工夫があります。だしや香辛料、香味野菜、レモンや酢の酸味を活用すれば、薄味でも満足感を得られます。
また、加工食品や漬物、干物を控え、麺類の汁は残すことが大切です。しょうゆやソースは直接かけず「つけて」食べることで使用量を減らせます。まずは食品の栄養成分表示を確認する習慣から始めましょう。
息切れの改善には、無理のない範囲での有酸素運動が欠かせません。安静にしすぎると筋力が衰え、少し動いただけで心臓や肺に大きな負担がかかります。適度な運動を生活に取り入れることで、心肺機能を維持し、息切れの悪循環を断ち切ることができます。
大切なのは「苦しくなるまで頑張ること」ではなく「楽に続けられること」です。安全に取り入れるためのポイントは以下のとおりです。
これらを守れば、安心して続けられる運動習慣を作れます。
息切れを和らげるためには、呼吸法の工夫によって、呼吸に使う筋肉を鍛えることができます。呼吸法を毎日少しずつ取り入れることで、呼吸のしやすさを実感しやすくなります。自宅でできる代表的な方法は次の2つです。
これらの方法は道具を使わずに手軽に始められ、続けることで呼吸が楽になり、日常生活の質も高まっていきます。
口すぼめ呼吸法は、息苦しさを感じたときに実践できるシンプルな方法です。特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など、息を吐き出しにくい方に効果が期待できます。吐くときに口をすぼめて抵抗をかけることで気管支が内側から支えられ、肺の奥に残った空気をスムーズに吐き出せます。
口すぼめ呼吸法のやり方は以下の流れです。
階段を上るときや入浴中など、息苦しくなりやすい場面で行うと効果が期待できます。息切れの予防にもなり、パニックを防ぎ落ち着いて呼吸できるようになります。
息切れは単なる「年のせい」ではなく、心臓や肺の病気が隠れている可能性があります。ご紹介したように、原因は多岐にわたり、適切な検査と治療で症状を和らげることができます。
「最近、息切れが気になる」と感じたら、自己判断せずに、まずはかかりつけ医や循環器内科へ相談しましょう。専門家と一緒に原因を見つけ、ご自身に合った治療やリハビリ、生活習慣の工夫を取り入れることをおすすめします。
息切れを正しく理解し対処することで、これからも安心して活動的な毎日を送ることができます。「いつものことだから」と自己判断せず、少しでも不安に感じたら、医療機関を受診しましょう。当院では循環器専門医が丁寧にお話を伺い、必要に応じた検査や治療で早期発見をサポートします。
Yamama Hafeez, Bryan S. Quintanilla Rodriguez, Intisar Ahmed, Shamai A. Grossman. Paroxysmal Supraventricular Tachycardia. StatPearls, 2025.
大石内科循環器科医院
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