大石内科循環器科医院

静岡市葵区鷹匠2-6-1 新静岡駅より 徒歩3分 駐車場あり

静岡市葵区鷹匠2-6-1
054-252-0585

blog
ブログ

糖尿病で疲れやすい理由!血糖値管理と体調改善のポイント

2025.07.02 糖尿病

「最近疲れやすい」と感じたら、糖尿病のサインの可能性があります。糖尿病患者さんの多くが疲労感を訴えています。血糖値が高い状態が続くと、エネルギー不足に陥ってしまうためです。疲労感は糖尿病の初期症状の一つであり、早期発見・早期治療が重要です。

この記事では、糖尿病で疲れやすい5つの理由を解説し、血糖値管理と体調改善のポイントも紹介します。具体的な食事法や運動法、専門家への相談の重要性も解説するので、ご自身の健康管理に役立ててください。

大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

糖尿病で疲れやすい5つの理由

糖尿病で疲れやすい5つの理由は以下のとおりです。

  • 高血糖による体への負担
  • 低血糖時のエネルギー不足
  • 血糖変動が自律神経に与える影響
  • 合併症による疲労感
  • 薬の副作用

高血糖による体への負担

高血糖は体に大きな負担をかけるため、疲労感の要因です。高血糖の状態では、血液中にブドウ糖が溢れているにもかかわらず、細胞の中へうまく取り込めず、エネルギーを作れません。エネルギーが不足する結果、体はだるく、疲れやすくなってしまいます。

高血糖は、血管を傷つける原因です。血管が傷つくと、血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が体の隅々まで届きにくくなります。血流の悪化も疲労感を増強させる一因です。高血糖の状態が続くと、細胞内の水分が血管側に移動し、細胞が脱水状態になることも疲労感につながります。

低血糖時のエネルギー不足

低血糖とは、血糖値が通常よりも低くなってしまう状態です。低血糖も、高血糖と同様に疲労感の原因となります。血糖値が下がると、脳や体に必要なエネルギーが不足し、めまいやふらつき、冷や汗、動悸、倦怠感などの症状が現れます

低血糖は、糖尿病の治療薬(インスリン製剤やSU薬など)の過剰使用や、食事を抜くことで起こりやすくなります。脳はブドウ糖を主なエネルギー源とするため、低血糖の影響を強く受けてしまうことに注意しましょう。

低血糖と似たような注意が必要な状態として「血糖値スパイク」があります。血糖値スパイクは食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象で、放置すると動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めるとされています。以下の記事では、血糖値スパイクの詳しい症状や健康リスク、予防するための具体的な対策について解説していますので、あわせてご覧ください。
>>血糖値スパイクの症状と健康リスク!知っておくべき対策法

血糖変動が自律神経に与える影響

血糖値が乱高下する状態は、自律神経のバランスを崩し、疲れやすい体質を作る原因です。自律神経は、交感神経と副交感神経から成り、体の機能を調整する重要な役割を担っています。血糖値の変動が大きいと、自律神経のバランスが乱れ、心拍数や血圧の調節が不安定になったり、体温調整がうまくいかなくなったりします。

自律神経の乱れは、疲労感や倦怠感、イライラ、不安感など、さまざまな不調を引き起こす原因です。自律神経の乱れは、糖尿病以外でも起こる可能性があるため、早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが重要です。

合併症による疲労感

糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。合併症の中には、疲労感を引き起こすものも多いです。糖尿病神経障害は、手足のしびれや痛みなどを引き起こし、日常生活に支障をきたします。糖尿病腎症は、腎臓の機能が低下することで、体内の老廃物が排出されにくくなり、倦怠感や食欲不振を引き起こす合併症です。

合併症は、生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、健康寿命を縮めることにもつながるため注意が必要です。研究によると、西太平洋地域では糖尿病の患者数は増加傾向にあり、2021年には約2億2000万人が糖尿病と合併症を抱えています。患者数の増加に伴い、医療費は2400億米ドルにも上っており、大きな社会問題となっています。

薬の副作用

糖尿病の治療薬の中には、疲労感を副作用として引き起こすものがあります。薬の服用後に強い疲労感を感じた場合は、自己判断で服薬を中止せず、必ず医師に相談しましょう。医師は、症状に合わせて薬の種類や服用量を調整したり、他の薬に変更したりするなど、適切な対処をします。

糖尿病治療薬による疲労感は、薬の種類でメカニズムが異なり、他の副作用と合併して現れる場合もあります。医師に相談することで、原因を特定し、適切な対処法を見つけることが可能です。

血糖値管理のポイント

血糖値管理のポイントは以下のとおりです。

  • 低GIの食品を中心に摂取する
  • 高たんぱくな食事にする
  • 運動を取り入れる
  • 血糖値の自己測定を活用する

低GIの食品を中心に摂取する

GI値とは、食品が血糖値を上昇させるスピードを示す指標です。GI値の高い食品は、血糖値を急激に上昇させ、その後急降下させるため、体が疲弊し、疲労感やだるさを感じやすくなる原因です。GI値の低い食品は、血糖値を緩やかに上昇させるため、疲れにくく、集中力を維持しやすくなります。

GI値の低い食品には、玄米や全粒粉パン、そば、野菜、果物、海藻、きのこなどがあります。白米や精製された小麦粉を使ったパン、うどんはGI値が高いため、血糖値が急上昇しやすい食品とされています。白米のGI値は約88ですが、玄米は約55です。食パンのGI値は約95ですが、全粒粉パンは約60です。

同じ種類の食品でも、精製度合いによってGI値が大きく異なるため、食品を選ぶ際にはGI値を意識することが大切です。

高たんぱくな食事にする

たんぱく質は、筋肉や臓器を作る重要な栄養素です。血糖値の上昇を緩やかにする効果もあるため、糖尿病の方にとって、積極的に摂取したい栄養素です。たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品に多く含まれています。

たんぱく質を十分に摂取することで、筋肉量が維持され、基礎代謝が向上し、エネルギー消費量が増加するため、血糖値のコントロールに役立ちます。たんぱく質は腹持ちが良く、過食を防げることによって、血糖値の急上昇を抑える効果も期待できます。

1食あたり、手のひら1枚分のたんぱく質を摂取することを目標にしましょう。朝食に卵やヨーグルト、昼食に鶏肉のソテー、夕食に魚の煮付けなどを加えることで、手軽にたんぱく質を摂取できます。たんぱく質を多く含む食品をバランス良く摂取することで、血糖値コントロールの改善だけでなく、健康維持にもつながります。

運動を取り入れる

適度な運動は、インスリンの働きを良くし、血糖値のコントロールに役立ちます。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むホルモンです。糖尿病の方は、インスリンの働きが低下している場合が多く、血糖値が上昇しやすくなっています。運動によりインスリンの働きが改善され、血糖値のコントロールがしやすくなります。

ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリング、ヨガなど、無理なく続けられる運動を選びましょう。1日30分程度の運動を目標に、週に3回以上行うのが理想的です。運動の種類や強度は、年齢や体力、持病などを考慮して、個々の状況に合わせて調整することが重要です。

血糖値の自己測定を活用する

血糖値の自己測定(SMBG)は、自分の血糖値の状態の把握に役立ちます。血糖値を測定することで、食事や運動が血糖値にどのように影響しているかを理解し、生活習慣を改善できます。血糖値の変動を把握することで、低血糖や高血糖の早期発見にもつながり、適切な対処も可能です。

血糖値の自己測定は、血糖自己測定器を用いて簡単に行うことができます。指先から少量の血液を採取し、測定器にセットするだけで、数秒で血糖値を測定できます。実際に自己測定を行う前に、医師や看護師から、正しい測定方法の指導を受けましょう。

血糖値の自己測定は、糖尿病の管理に不可欠なツールです。自分の血糖値の状態を把握し、適切な生活習慣を身につけることで、糖尿病の進行を抑制し、合併症を予防することにつながります。

より体調改善が期待できる方法

より体調改善が期待できる方法は以下のとおりです。

  • 適切な水分と電解質を補給する
  • 疲労改善が期待できる栄養素を摂取する
  • 十分な睡眠を取る
  • ストレスを管理する
  • 専門家に相談する

適切な水分と電解質を補給する

水分と電解質の補給は、疲れにくい体を作る方法の一つです。私たちの体は、成人の場合約60%が水分でできています。水分は、栄養や酸素を体中に運んだり、体温を調節したり、老廃物を排出するなど、生命維持に欠かせません。水分が不足すると、エネルギーが効率的に作られず、疲れやすくなってしまいます。

汗をかくと水分とともにナトリウムやカリウムなどの電解質も失われます。電解質は、筋肉や神経の働きを正常に保つために必要な成分です。電解質が不足すると、脱力感や倦怠感、筋肉のけいれん、食欲不振などの症状が現れることがあります。糖尿病の方は、高血糖によって口渇感が強くなり、水分を多く摂取する傾向があります。

同時に、尿の量も増えるため、体内の電解質バランスが崩れやすくなります。水分補給だけでなく、電解質の補給も意識することが大切です。こまめに水分を摂り、スポーツドリンクや経口補水液などで電解質も補給しましょう。特に、夏場や運動後などは、意識的に水分と電解質を補給することが重要です。

疲労改善が期待できる栄養素を摂取する

食事から摂取する栄養素も、疲労感に大きく関わってきます。バランスの良い食事を心がけ、疲労回復に効果が期待できる以下の栄養素を積極的に摂りましょう。

  • ビタミンB群:豚肉・レバー・うなぎ・卵・牛乳に多く含まれる
  • ビタミンC:果物・野菜に多く含まれる
  • 鉄分:レバー・ほうれん草・ひじき・あさりに多く含まれる
  • マグネシウム:アーモンド・ひじき・豆腐・納豆に多く含まれる

上記の栄養素は、単独で効果を発揮するだけでなく、互いに連携して働いています。特定の栄養素だけを過剰に摂取するのではなく、さまざまな食品をバランス良く食べましょう。

十分な睡眠を取る

睡眠は、心身の疲労を回復させるために重要です。睡眠不足は、疲労の蓄積につながり、糖尿病の症状を悪化させる可能性があります。質の高い睡眠を十分に取ることは、心身の健康維持に不可欠です。睡眠の質を高めるために、以下の点に注意しましょう。

  • 毎日同じ時間に寝起きする
  • 寝る前にカフェインを摂らない
  • 寝室を暗く静かに保つ
  • 適度な運動をする
  • ぬるめのお風呂に入る
  • 寝る前にリラックスする時間を作る

成人の場合、1日の睡眠時間は7~8時間が目安とされています。個人差はありますが、自分に合った睡眠時間を見つけることが大切です。

ストレスを管理する

ストレスは、自律神経のバランスを崩し、疲労感を増強させる原因になります。ストレスをうまく管理することも、糖尿病による疲労を軽減するために重要です。ストレスを軽減するためには、以下の方法が有効とされています。

  • 趣味やリラックスできる活動を見つける
  • 軽い運動をする
  • バランスの良い食事を摂る
  • 家族や友人と過ごす時間を作る
  • 自然の中で過ごす

自分に合ったストレス発散方法を見つけ、少しずつ実践してみましょう。

専門家に相談する

糖尿病による疲労が改善しない場合は、ためらわずに専門家に相談しましょう。医師や管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床心理士などの専門家は、個々の状況に合わせた適切なアドバイスやサポートを提供します。糖尿病の治療は、医師との連携が不可欠です。必要に応じて、専門医療機関への紹介も行います。

疲労感がなかなか改善しない場合、糖尿病以外の病気である可能性もあります。気になる症状がある場合は、医療機関を受診して適切な診断・治療を受けましょう。

健康診断は、糖尿病の兆候を早期に発見できるチャンスでもあります。以下の記事では、糖尿病に関連する健康診断の重要な数値や、見落としやすいポイントについて詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
>>糖尿病の健康診断で見るべき数値!早期発見のポイント

まとめ

高血糖や低血糖、血糖値の乱高下は体に大きな負担をかけ、自律神経のバランスを崩し、疲れやすい状態を引き起こす原因です。合併症や薬の副作用も疲労感を増強させる要因となります。疲れを軽減し、快適な生活を送るためには、血糖値のコントロールが重要です。

低GI食品や高たんぱくな食事を心がけ、適度な運動を取り入れましょう。血糖値の自己測定も、自分の状態を把握し、生活習慣を改善するうえで役立ちます。水分と電解質の適切な補給、疲労回復に効果的な栄養素の摂取、十分な睡眠、ストレス管理も大切です。疲労感が改善しない場合は、一人で悩まず、専門家に相談しましょう。

医師や管理栄養士など、さまざまな専門家があなたの悩みに寄り添い、適切なサポートを提供してくれます。

以下の記事では、血糖値の基準値や、異常値が引き起こす健康リスク、そして日常生活でできる対策について詳しく解説していますので、参考にしてください。
>>血糖値の正常範囲とは?異常値が引き起こすリスクと対策を解説

参考文献

Boon-How Chew, Pauline Siew Mei Lai, Dhashani A/P Sivaratnam, Nurul Iftida Basri, Geeta Appannah, Barakatun Nisak Mohd Yusof, Subashini C Thambiah, Zubaidah Nor Hanipah, Ping-Foo Wong, Li-Cheng Chang. Efficient and Effective Diabetes Care in the Era of Digitalization and Hypercompetitive Research Culture: A Focused Review in the Western Pacific Region with Malaysia as a Case Study. Health Systems Reform, 2025, 11(1), p.2417788.

大石内科循環器科医院
420-0839
静岡市葵区鷹匠2-6-1
TEL:054-252-0585

Google Maps