心臓を締めつけるような痛みや、息が苦しくなるような症状に悩まされていませんか?もしかすると、狭心症の可能性があります。糖尿病になると、動脈硬化を進行させるリスクがあります。糖尿病の合併症である神経障害により、狭心症の胸の痛みを感じにくく、病気に気づかないまま重症化してしまう恐れがあります。
この記事では、狭心症と糖尿病の関係性、併発を防ぐための対策・治療法を詳しく解説します。糖尿病が狭心症に影響するリスクを知り、健康的な日常生活を送って血管の健康寿命を伸ばしましょう。
大石内科循環器科医院では、狭心症や糖尿病の検査も実施しています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなり、心臓が必要とするだけの血液が供給されなくなる病気です。狭心症の症状や原因を解説します。
狭心症の代表的な症状は、以下の3つです。
胸の痛みは、心臓の酸素不足を訴えるために発生しますが、感じ方に個人差があります。痛みは心臓だけでなく、左肩や左腕、背中などに伝わって拡散する場合もあります。
息切れは、心臓のポンプ機能が低下し、肺に血液が溜まるために起こります。運動や階段を上る際など、心臓への負担が大きくなった場合に息切れを感じやすくなります。心臓が酸素不足に陥ると、体は緊急事態を認識し交感神経が活発になり、冷や汗をかきます。
症状の程度や持続時間は個人差があるため、症状が重かったり、長く続いたりする場合は、すぐに医療機関を受診してください。糖尿病の方は、合併症の神経障害によって、痛みなどの感覚が鈍くなってしまうため、定期的な検査が必要です。早期発見と適切な治療が重要です。
高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、動脈硬化を進行させる危険因子です。狭心症を放置すると、心筋梗塞に進行する可能性があります。早期発見・早期治療が重要になるため、症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
糖尿病は、自覚症状が現れにくいため、知らないうちに病気が進行し、重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。糖尿病の症状と原因について解説します。糖尿病は生活習慣病の一つであるため、血糖値のコントロールや合併症を予防し、健康な生活が送れるようにしましょう。
糖尿病の初期症状は軽微で、日常生活で感じる変化と区別がつきにくいため、見逃してしまう人が少なくありません。高血糖の状態が続くと、以下の症状が出現する可能性が挙げられます。
高血糖が免疫機能を低下させ、細菌の増殖を促進するため、切り傷や擦り傷の治りが遅くなり、感染症のリスクも高まります。
糖尿病は、大きく分けて以下の2つの原因によって引き起こされます。
インスリン分泌不足は、1型糖尿病の主な原因です。主に自己免疫疾患が原因で、自分の免疫システムが誤ってすい臓のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)を攻撃し破壊することで発症します。インスリンが不足すると、ブドウ糖が細胞に取り込めず、血液中に溢れ出てしまうため血糖値が高くなります。
インスリン抵抗性は、2型糖尿病の主な原因です。2型糖尿病は、遺伝的要因や生活習慣(過食や運動不足、肥満など)が複雑に絡み合って発症すると考えられています。インスリンが分泌されても、受容体がうまく機能しないため、ブドウ糖が細胞内に入れず、血糖値が高くなりやすい状態です。
実は、糖尿病は中高年だけでなく、30代でも発症するケースが増えてきています。若いうちから血糖値を意識し、日常生活を見直すことが予防と改善のカギとなります。以下の記事では、血糖値を下げるために効果が期待できる7つの生活習慣改善法について、具体的に紹介していますので、ぜひご確認ください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント
糖尿病と狭心症の密接な関係性やリスク、メカニズムなどについて、下記の内容を解説します。
高血糖状態が慢性的に続くと、血管の内壁が徐々に傷つきやすく、動脈硬化をきたし狭心症の原因につながります。高血圧や脂質異常症といった症状も併発しやすいために、狭心症のリスクを高めます。
糖尿病は神経障害を合併しやすく、狭心症の胸の痛みを感じにくい「無症候性狭心症」のリスクが高まります。研究でも示されているように、糖尿病患者さんは心筋梗塞や脳卒中、さらには足の切断や死亡のリスクが有意に増加します。
高血糖が続くと、血管の内側にある血管内皮細胞が傷つき、炎症を起こしやすくなります。血管内皮細胞は、血管を健康に保つための重要な役割を担っていますが、傷つくと血管の壁が厚くなり、動脈硬化を促進させてしまう可能性があります。
糖尿病の方は、高血圧や脂質異常症を併発しやすい傾向があります。高血圧は、血管に高い圧力がかかっている状態で、動脈硬化を促進させます。脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質が過剰になる状態で、動脈硬化の原因となります。
糖尿病や高血圧、脂質異常症などは動脈硬化のリスクを高めますが、合併するとリスクは増大します。症状が重なると、狭心症のリスクは飛躍的に高まってしまうため、日頃から血圧や脂質の管理にも気を配る必要があります。
特に高血圧は、自覚症状がほとんどないまま進行するため注意が必要です。以下の記事では、高血圧がなぜ起こるのかという原因から、日常生活でできる予防・対策方法までわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>高血圧はなぜ起こる?原因と対策をわかりやすく解説
狭心症と糖尿病は、命に関わる危険な合併症を引き起こす可能性があり、併発を防ぐための対策が必要です。狭心症と糖尿病の併発を防ぐための対策は以下の3つです。
糖尿病の治療は、医師の指示に従い、食事療法や運動療法、薬物療法などを適切に行うことが重要です。血糖値の目標値は、年齢や合併症の有無などによって異なるため、最適な目標値については、医師と相談するようにしましょう。
医師の指導なしに治療を変更することは望ましくありません。定期的に血糖値やHbA1c(過去1~2か月の平均血糖値を反映する指標)を確認し、適切な血糖コントロールが維持できると、狭心症のリスクを最小限に抑える予防につながります。
毎日の生活習慣の改善は、狭心症と糖尿病の併発予防に役立つ可能性があります。食事や運動、喫煙習慣などは、動脈硬化の進行に大きく影響を与えるため、注意が必要です。
食事は、バランスの良い食事を心がけ、以下の食品を積極的に摂りましょう。
食物繊維は、食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できる可能性があります。糖質や脂質の過剰摂取は避け、塩分も控えめにしましょう。加工食品やインスタント食品、清涼飲料水などは、塩分や糖分、脂質が多く含まれている場合が多いため、摂取量に注意が必要です。
運動は毎日30分程度のウォーキングなどの軽い運動を継続すると、血糖値の改善や血圧の低下、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の増加などの効果が期待できる可能性があります。激しい運動は必要なく、無理のない範囲で継続的に体を動かしましょう。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。禁煙は狭心症だけでなく、他の病気の予防につながる可能性があります。禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診するなど、専門家のサポートを検討しましょう。
「血糖値スパイク」と呼ばれる食後の急激な血糖値上昇は、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高めるとされています。以下の記事では、血糖値スパイクの症状や健康リスク、そして日常でできる対策法について詳しく解説していますので、早めのケアに役立ててください。
>>血糖値スパイクの症状と健康リスク!知っておくべき対策法
狭心症と糖尿病は、早期発見と適切な治療が予後を左右します。自覚症状がなくても定期的な検査が、病気を早期に発見し、重症化の予防につながります。狭心症の検査では、以下の内容が一般的です。
狭心症の疑いがある場合は、運動負荷心電図検査が必要です。糖尿病の合併症である網膜症や腎症の検査も同時に行うと、全身の血管の状態を総合的に評価できます。
検査を受ける頻度は、年齢や持病、生活習慣などによって異なりますので、医師と相談のうえで決定しましょう。早期発見・早期治療によって、狭心症と糖尿病の併発による合併症予防ができます。
狭心症と糖尿病は、併発すると症状の悪化や病気の進行を早めるリスクが高まるため、適切な治療と管理が重要です。狭心症と糖尿病の併発を防ぐための3つの治療法は、以下のとおりです。
狭心症と糖尿病の併発に対する薬物療法は、それぞれの病態に合わせた薬剤を組み合わせて行います。主な薬剤の種類と働きは以下のとおりです。
抗血小板薬は血栓の形成を防ぎ、血管が詰まるのを予防する効果が期待されます。抗血小板薬は、血栓の形成を抑制し、狭心症の発作や心筋梗塞の予防に効果を発揮する可能性があります。
β遮断薬は心臓の拍動数を抑え、負担を軽減することで狭心症の発作を予防し、症状を和らげる効果が期待されます。β遮断薬は、拍動数の上昇を抑える働きがあるため、高血圧の糖尿病患者さんにも有効です。
硝酸薬は血管を拡張することで、心臓への血液の流れを良くし、狭心症の発作を予防し、症状を和らげる効果が期待されます。ニトログリセリンは、舌の下で溶かして服用するタイプや、スプレーで噴霧するタイプなど、さまざまな種類があります。
他の治療薬は、血糖値を下げるためのインスリン注射や経口血糖降下薬などがあります。高血糖によって引き起こされる血管の損傷を防ぐのに役立ちます。糖尿病の薬は、血糖値のコントロール状態や合併症の有無、腎機能などを考慮して選択されます。
薬剤は、患者さんの症状や病状、他の病気の有無などを考慮して、医師が適切な種類と量を決定します。自己判断で服用を中止したり、量を変えたりするのは危険です。薬の効果や副作用には個人差があり、服用中に気になる症状が現れた場合は、医師に相談しましょう。
薬物療法で症状が改善しない場合や、重症の狭心症の場合には、カテーテル治療が検討されます。カテーテル治療は、足の付け根や手首の動脈から細い管(カテーテル)を挿入し、冠動脈まで進める治療法です。
狭窄した冠動脈でカテーテルの先端にあるバルーンを膨らませ、血管を広げることが可能です。金属製の網状の筒(ステント)を留置すると、血管を押し広げ、血流が改善する効果があります。
カテーテル治療は、比較的低侵襲な治療法であり、入院期間も短期間で済む場合が多いです。出血や血管損傷などの合併症が起こる可能性もあるため、医師から治療のメリットとデメリットについて十分な説明を受け、理解したうえで治療を受ける必要があります。
カテーテル治療が困難な場合や、複数の血管に狭窄がある場合などには、バイパス手術が検討されます。バイパス手術は、狭窄した冠動脈の先の部分に、自分の体の他の部分から採取した血管を移植して、心臓の筋肉へ必要な酸素供給を目的としています。
バイパス手術は、カテーテル治療よりも侵襲は大きいですが、複数の血管病変や複雑な病変にも対応できるメリットがあります。医師と十分に相談し、手術の必要性やリスクについて理解したうえで、治療を受けることが大切です。
狭心症と糖尿病は、動脈硬化を通じて深く結びついています。高血糖は血管を傷つけ、動脈硬化を促進し、狭心症のリスクを高めます。糖尿病による神経障害は、狭心症の自覚症状を遅らせ、重症化のリスクを高める要因となります。
日々の生活習慣において、以下の改善策が狭心症と糖尿病の予防・改善に有効です。
定期的な検査で早期発見・早期治療に努め、血糖値や血圧、脂質などの適切なコントロールを行いましょう。糖尿病の方は、狭心症の症状が非典型的、あるいは無症候性の場合があるため注意が必要です。
健康な血管を維持し、心筋梗塞などの合併症を防ぐためにも、積極的な予防と治療への取り組みが大切です。少しでも異変を感じたら、早期に医療機関を受診しましょう。
狭心症と密接に関連する病気として「心筋梗塞」があります。以下の記事では、心筋梗塞の基礎知識や症状、予防のためにできる対策についてわかりやすく紹介していますので、あわせてご覧ください。
>>心筋梗塞について
Joshua A Beckman, Mark A Creager, Peter Libby. Diabetes and atherosclerosis: epidemiology, pathophysiology, and management. JAMA, 2002, 287, 19, p.2570-2581
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