突然激しい痛みが生じる「痛風発作」では、適切な診療科を受診することが大切です。痛風の治療は、症状の段階によって受診すべき診療科が異なります。痛みを抑えるだけの対症療法では、根本原因である高尿酸血症は改善されず、痛みが再発する可能性があります。
本記事では、症状に応じた適切な診療科の選び方や具体的な検査・治療の流れ、再発を防ぐための生活習慣を解説します。正しい知識を身につけ、痛風発作を予防しましょう。
大石内科循環器科医院では、痛風や高尿酸血症をはじめ、生活習慣病を総合的に診療しています。痛風の症状やリスク、治療法について詳しく解説していますので、気になる方は以下もご覧ください。
>>痛風について
痛風の治療で大切なのは、状況に合った診療科を選ぶことです。受診すべき診療科は、以下のとおりです。
激しい痛みや腫れがあるときは、整形外科を受診しましょう。整形外科は、痛風発作の急性期症状に対する治療を行う診療科です。痛みを抑える治療は、炎症を鎮める飲み薬(非ステロイド性抗炎症薬など)や湿布を処方します。痛みが激しい場合は、腫れている関節に直接ステロイド薬を注射することもあります。
炎症を抑え、痛みを和らげることが目的です。原因を特定するために、レントゲンや超音波(エコー)検査を行います。関節の状態を観察し、骨の異常や痛みの原因、ケガや他の病気の影響を確認します。
関節に溜まった液体(関節液)を顕微鏡で調べる検査では、痛みの原因である「尿酸の結晶」が確認されれば痛風と診断されます。
痛風の根本治療や再発防止を目指す場合は内科またはリウマチ科の受診が最も適しています。これらの診療科では、尿酸値のコントロールだけでなく、全身の健康状態を踏まえた長期的な管理を行います。整形外科で痛みが落ち着いたあとや、健康診断で尿酸値の上昇を指摘された場合に受診するのが理想です。
治療の主な内容は次のとおりです。
痛風は高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病を合併しやすいため、内科での総合的な健康管理が重要です。リウマチ科では痛風と症状が似ている関節リウマチなどの鑑別を専門的に行います。早期に専門医に相談することで、再発防止と生活の質の改善につながります。
尿酸値のコントロールには、食事内容や運動習慣の見直しが重要となります。具体的にどのような工夫が有効なのかを理解しておくことで、再発予防にもつながります。以下の記事では、日常生活で実践しやすい改善方法を詳しく紹介しています。
>>尿酸値を下げる食事と運動のコツ!今日から実践できる生活習慣の改善法
痛風の診断では、血液と尿の状態を調べて尿酸の量や排出の異常を確認します。検査の結果により、発作の原因や重症度を把握し、適切な治療方針を立てます。血液検査と尿検査について以下で解説します。
血液検査で、血液中の尿酸値を調べます。尿酸値が基準の7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は、痛風発作が起きやすくなるサインです。血液検査は、痛みのピーク時には数値が下がる場合があるため注意が必要です。
激しい痛みの発作中、原因である尿酸が関節に集まり結晶になるため、血液中に含まれる尿酸の量が一時的に下がる場合があります。症状が和らいだ頃に再度採血し、尿酸値を再確認するなど、採血時期を医師と相談しましょう。
尿検査では、尿酸の排泄量を確認します。尿酸値の高くなる原因が「産生過剰型」または「排泄低下型」なのかを判断します。痛風は腎臓に負担をかけやすく、慢性腎臓病などの合併にも注意が必要です。尿検査の定期的な確認により、腎臓への負担を早期に察知し、合併症の予防につなげることができます。
尿検査は、腎臓の働きを定期的にチェックする大切な検査です。医師は検査結果と問診や診察で得られた情報を総合的に判断して診断します。
痛風の治療は、薬で炎症を抑え、尿酸値をコントロールすることが基本です。症状の時期によって治療の目的が異なるため、適切な薬の使い分けが重要になります。急性期・慢性期・治療継続のポイントを解説します。
痛風発作が起きている急性期の治療目的は、痛みと関節の炎症の改善です。主に以下の3種類の薬が使用されます。
急性期は痛みと炎症症状が強く出現するため、薬はできるだけ早く使い始めることが大切です。急性期に炎症を抑える薬を速やかに開始することが推奨されています。
痛風は初期段階で適切に対応することで、発作の重症化を防ぐことが可能です。早期にみられるサインを理解しておくと、受診のタイミングを逃さずにすみます。以下の記事では、初期症状の特徴をより詳しく解説しています。
>>痛風の初期症状を医師が解説|よくある前兆サインや見分け方、対処法
慢性期の治療目的は、高尿酸血症を改善することです。血液中の尿酸値を尿酸降下薬によって目標値(6.0mg/dL以下)まで下げ、維持することで痛風発作や合併症を防ぎます。尿酸降下薬には、主に2つのタイプがあります。
尿酸降下薬は、発作が完全に治まってから開始するのが一般的です。発作中の尿酸値の急激な変動は、関節に蓄積した尿酸の結晶が刺激され症状を悪化させる可能性があります。医師は、患者さん一人ひとりの状態に合わせ、薬の開始時期や量を慎重に判断します。
痛みが消失しても、尿酸降下薬の継続が必要です。痛風発作の原因は、尿酸値が高い状態が続く高尿酸血症です。痛みが治まっても、状態が改善されたわけではありません。薬を中断すると、血液中の尿酸値は再び上昇し始めます。
治療が不十分であったり、自己判断で中断されたり、管理がおろそかになると、発作を繰り返すだけでなく深刻な問題につながる可能性があります。薬の適切な管理ができないことによるリスクは、以下のとおりです。
処方された薬を継続することは、発作の再発を防ぐだけでなく、病気の予防につながります。自己判断で薬をやめず、医師と相談しながら治療を継続しましょう。
発作を繰り返さないために、薬物療法と合わせ以下の5つの生活習慣を見直すことが大切です。
プリン体は体内で代謝されると尿酸に変化するため、摂りすぎると尿酸値が上がり痛風発作のリスクを高めます。以下の食品は、プリン体を多く含みます。
毎日の摂取は避けるなど、意識することが大切です。プリン体を多く含む食品を知り、量を控えめにしたり、頻度を減らしたりなどの工夫をしましょう。
お酒は尿酸値を上げるため、種類を問わず控えることが大切です。アルコールは尿酸の産生を増やし、排泄を妨げます。ビールはプリン体を多く含むため、尿酸値が上昇しやすいです。適量を心がけるようにしましょう。
蒸留酒やワインなどのお酒の種類にかかわらず、飲みすぎは禁物です。研究では、アルコール飲料の種類に関わらず、痛風発作のリスクを高めると報告されています。飲む場合は適量を守り、週に何日かお酒を飲まない休肝日を設けましょう。
食事療法で大切なのは、食事全体のバランスです。積極的に摂りたい食品は、以下のとおりです。
研究では、牛乳やヨーグルトなどの乳製品が痛風発作のリスクを下げることが報告されています。痛風の方に推奨される食品は、肥満や生活習慣病の改善にもつながります。痛風や高尿酸血症の方は、糖尿病を合併する割合が高いことが報告されており、合併症を防ぐためにも日々の食生活の見直しが大切です。
体内の尿酸は、多くが尿として体外に排出されます。水分をとり尿量を増やすことは、痛風の合併症である尿管結石の予防につながります。飲水量は1日に2,000ml以上を目安にしましょう。水分摂取には、水やお茶(麦茶、ほうじ茶などカフェインの少ないもの)がおすすめです。
砂糖を多く含むジュースや清涼飲料水は、カロリーの摂りすぎとなり肥満につながります。一度にたくさん飲むのではなく、こまめな摂取を意識しましょう。起床時や食事、運動・入浴前後、就寝前などでコップ1杯の水を飲む習慣をつけると、無理なく必要な水分量を確保できます。
慢性腎臓病の合併が見られる方は、医師に相談し水分摂取の目安を設定しましょう。
適度な運動を習慣にして体重をコントロールすることは、痛風の再発予防が期待されます。体に負担をかけないウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。「少し汗ばむ程度」「おしゃべりしながら続けられるくらいの強さ」を目安に1回30分程度、週に3〜4日から始めてみましょう。
運動時の注意点は、足が痛むなど痛風発作の症状があるときは運動を中止し、安静にすることです。運動中は汗をかき、体内の水分が失われやすくなります。脱水とならないよう、運動中・前後はこまめに水分を補給しましょう。
運動は、痛風だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の改善にもつながります。高尿酸血症の方は糖尿病にもなりやすいため、日々の運動で体重や血糖値をコントロールすることが大切です。日常生活の中で少しずつ体を動かす機会を増やすことから始めましょう。
痛風の治療は、症状の段階によって受診する診療科が異なります。激しい痛みや腫れがあるときは整形外科に受診し、痛みが和らいだら内科やリウマチ科で根本的な治療を始めることが大切です。治療は薬だけでなく、食事や運動などの日常生活を見直すことが発作の再発を防ぐポイントとなります。
痛みが消えても完治したわけではありません。自己判断で薬をやめず、医師と相談しながら治療を続けることが、腎臓や血管などの合併症予防につながります。足に異変を感じたら専門医に相談しましょう。痛風に対する知識を身につけ、上手にコントロールすることが大切です。
痛みが長期化している場合には、発作以外の原因が隠れている可能性もあるため、早期に原因を把握することが重要です。痛みが続く際の対処法や放置するリスクを、次の記事で詳しく解説しています。
>>痛風が1ヶ月以上痛いときの対処法|長引く痛みの原因と放置するリスクを解説
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