痛風による痛みが1ヶ月以上続く場合は、別の疾患が関係している可能性もあります。痛風を「いつか治る」と考えて放置すると、合併症を招く危険性があります。長引く原因は、関節が炎症を起こしているだけではありません。
放置すると関節が変形して歩行困難になったり、腎不全や心筋梗塞などの重篤な病気につながったりする可能性があります。この記事では、長引く痛みに関する4つの原因と、放置すると起こりやすい合併症リスクを紹介します。1ヶ月以上痛みが続いている方が取るべき対処法も解説します。
長引く痛風の痛みを放置せずに、適切な対応を行い早期回復を目指しましょう。
大石内科循環器科医院では、痛風や高尿酸血症をはじめ、生活習慣病を総合的に診療しています。痛風の症状やリスク、治療法について詳しく解説していますので、気になる方は以下もご覧ください。
>>痛風について
痛風の痛みが1ヶ月以上長引く、主な4つの原因を解説します。
痛みが1ヶ月以上続く主な原因は、関節内での尿酸結晶の蓄積です。血液中の尿酸値が高くなると、関節内で尿酸が結晶化します。尿酸結晶が関節内で遊離すると体の白血球が反応し、急性痛風発作として激しい痛みや腫れが生じます。強い発作が治まっても、関節内に蓄積した尿酸結晶は消失しません。
慢性関節炎は、残存した尿酸結晶が関節を刺激し続けることで、弱い痛みが続いたり、何度も発作を繰り返したりします。痛みが長引く原因につながります。
尿酸値のコントロールには、食事内容や運動習慣の見直しが重要となります。具体的にどのような工夫が有効なのかを理解しておくことで、再発予防にもつながります。以下の記事では、日常生活で実践しやすい改善方法を詳しく紹介しています。
>>尿酸値を下げる食事と運動のコツ!今日から実践できる生活習慣の改善法
現在受けている治療が体に合っていない場合も、痛みが長引く原因となります。痛風の治療は、発作が起きている時期や体の状態に合わせ、薬の種類や量を細かく調整する必要があります。考えられる治療の問題点は、以下の2つが挙げられます。
薬には、痛み止めと尿酸値を下げる薬があります。痛みの増強時に尿酸値を下げる薬を開始すると、発作を悪化させる可能性があります。薬の投与量が足りないと炎症を抑えるのに不十分であるため、内服のタイミングや痛みの状態を医師に相談することが重要です。
薬に不安がある場合には、薬剤師への相談も可能です。薬剤師が患者さんの教育やサポートに関わることで、痛風の治療成績の向上に貢献した研究報告があります。薬剤師は、薬の正しい飲み方や副作用を詳しく説明し、安心して治療を続けられるように手助けします。
痛みが軽減されたからといって自己判断で服薬を中断すると、症状が再び悪化し、痛みが長引く恐れがあります。痛風治療で大切なのは、無症状でも薬で尿酸値を低い状態に保ち続けることです。薬を中断すると、以下の悪循環に陥る可能性があります。
尿酸値を下げる薬は、血液中の尿酸濃度を低下させることで、関節内の尿酸結晶が徐々に減少しやすい環境をつくります。治療を続けることは、将来の再発を防ぐことが目的です。
足や関節の痛みが1ヶ月以上続く場合、単なる痛風ではなく「偽痛風」や「関節リウマチ」など別の病気の可能性を疑うことが重要です。これらの疾患は原因や症状の現れ方が異なるため、自己判断せず医療機関で検査を受けることが早期改善の鍵となります。
偽痛風はカルシウム結晶の沈着によって炎症を起こし、高齢者に多く、膝や肩などの大きな関節に生じやすいです。関節リウマチは免疫の異常が原因で、朝のこわばりや左右対称の腫れが特徴です。また、変形性関節症は関節軟骨のすり減りによる慢性痛を起こしやすく、蜂窩織炎は細菌感染による赤みと熱感を伴います。
痛む部位が変化する・腫れが広がる・長引くなどの場合は、血液検査やレントゲン検査など専門的な診断を早めに受けることが大切です。
痛風を放置した際の3つのリスクについて解説します。
痛風結節は、長期間の高尿酸状態で関節や皮下に結晶が固まったものです。体のさまざまな場所に発生し、少しずつ体にダメージを与えています。痛風結節が主にできやすい場所は、以下のとおりです。
痛風結節は、関節の動きが悪くなったり、靴が履きにくくなったりして、日常生活に支障をきたすことがあります。放置すると、尿酸結晶が骨や軟骨に損傷を起こすことがあり、関節が変形する恐れがあります。一度変形してしまった関節を元に戻すことは難しく、常に痛みが続くようになり最終的には歩行困難になる可能性があります。
血液中の尿酸は腎臓で濾過され、尿として排出されます。しかし、尿酸値が高い状態が長く続くと、腎臓に過度の負担がかかり続け、腎機能が低下する痛風腎になる危険性があります。痛風腎は、初期には自覚症状がないため、気づかないうちに進行することがあります。腎機能の低下が進むと、体にさまざまな不調が現れます。
症状や腎機能低下による変化は、以下のとおりです。
尿酸値を下げる治療は、痛風発作の痛みを防ぐだけではありません。自身の腎臓を守り、将来の腎不全への進行を防ぐために大切な治療です。
痛風は初期段階で適切に対応することで、発作の重症化を防ぐことが可能です。早期にみられるサインを理解しておくと、受診のタイミングを逃さずにすみます。以下の記事では、初期症状の特徴をより詳しく解説しています。
>>痛風の初期症状を医師が解説|よくある前兆サインや見分け方、対処法
高い尿酸値は、関節や腎臓だけでなく全身の血管にも悪影響を及ぼし動脈硬化を進行させる原因の一つです。動脈硬化が進行すると、命に関わる病気のリスクが高まります。以前から、痛風の患者さんは高血圧を合併しやすいことが知られていましたが、研究で高尿酸血症と高血圧の関係性が報告されています。
遺伝情報を用いた大規模な分析により、血液中の尿酸値の上昇が、高血圧を引き起こす直接的な原因になる因果関係が示されました。単に併発しやすい内容ではなく、高い尿酸値が血圧を上げる要因となる可能性が示唆されています。痛風の患者さんは、以下の生活習慣病を合併しやすい傾向があります。
生活習慣病と高い尿酸値の複数リスクが重なることで、動脈硬化はさらに進行します。心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気を引き起こす危険性が高まります。痛風の治療は、関節の痛みを和らげるだけでなく、将来の健康や合併症を予防する重要な取り組みです。
1ヶ月以上も痛みが続く場合は、専門の医療機関を受診することが推奨されます。以下の専門機関について、解説します。
整形外科は、骨や関節、筋肉などの運動器疾患の専門診療科です。痛みや腫れの診療を専門としており、以下のような方に受診が適しています。
整形外科では、痛みの原因を正確に診断したうえで症状を和らげる治療を行います。鑑別診断のために検査を行う必要があり、行われる主な検査は以下のとおりです。
上記内容の検査を行ったうえで、医師が診断します。痛みや炎症を抑える内服薬や貼り薬の処方、必要であれば関節内注射を行います。突然の激しい痛みで歩くのもつらい場合や、痛みの原因を明確にしたい方は、整形外科を受診しましょう。
内科・リウマチ科は、痛風の痛み改善だけでなく、尿酸値の管理や再発予防、合併症の評価を行う専門科です。高い尿酸値は体質が原因の場合もあるため、内科・リウマチ科で長期的に治療を継続します。痛風の方で内科・リウマチ科の受診は、以下の方がおすすめです。
生活習慣に関しては、食事や運動など個人に合わせた具体的なアドバイスを行います。定期的に全身状態を確認し、痛みの管理だけでなく、健康を見据えた根本治療や合併症管理を行いましょう。
痛風の痛みが1ヶ月以上続く場合は、他の疾患との鑑別が必要です。痛風の痛みが緩和されたとしても、自己判断で服薬を中断したり、軽い痛みを我慢したりすることは危険です。蓄積した尿酸結晶は、関節の変形や腎臓への深刻なダメージを与えます。さらに、動脈硬化を進行させ心筋梗塞などの重篤な病気につながる危険性があります。
痛風治療で大切なのは、痛みの原因を正しく突き止め、適切な治療を継続することです。痛みを我慢せずに、整形外科や内科・リウマチ科などの専門医に相談し、一日も早く安心できる毎日を取り戻しましょう。
痛風が疑われる場合、受診先を誤ると診断や治療開始が遅れる可能性があります。適切な診療科を選ぶことは、関節の損傷や腎機能悪化を防ぐうえでも重要です。どの科を受診すべきか、検査や治療の進め方を詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
>>痛風になったら何科に行くの?病院を受診するタイミングや検査・治療の流れを解説
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