大石内科循環器科医院

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【循環器専門医が解説】心電図異常を指摘された方へ

2024.11.07 循環器

健康診断で「心電図に異常があります」と告げられたら、不安になりますよね。心臓に何か重大な病気が隠れているのではないかと、心配してしまう方も多いでしょう。

しかし心電図異常は、必ずしも深刻な病気とは限りません。様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法も異なります。

この記事では代表的な心電図異常の種類と、その特徴について解説します。心電図異常の原因や治療法を知ることで不安を解消し、安心して生活できるようになるはずです。

心電図異常の種類とそれぞれの特徴4つ

健康診断などで「心電図に異常があります」と告げられると、不安になりますよね。健康診断の結果を受け取った後、インターネットで自身の症状を調べて余計に不安を煽られた経験のある方もいるのではないでしょうか。

心電図異常とは、心臓の電気的な活動に乱れが生じている状態のことです。実は心電図異常には様々な種類があり、それぞれ特徴が違います。今回は代表的な4つの心電図異常について、詳しく説明していきます。

心房細動の兆候

心房細動は心臓の上の部分である心房が細かく震えることで、心臓のリズムが乱れる不整脈の一種です。心臓が規則正しく収縮できなくなるため、全身への血液供給が滞り様々な症状が現れます。

症状としては動悸やめまい、息切れなどが挙げられます。動悸は脈が速くなったり遅くなったり、不規則になったりする症状です。安静時だけでなく、労作時にも出現することがあります。めまいは脳への血流が不足することで起こり、意識が遠のくような感覚やふらつきを伴います。息切れは、肺への血流が滞ることで呼吸が苦しくなる症状です。

これらの症状は、常に現れるとは限りません。自覚症状が全くない場合もあります。私が診察した患者さんの中には、健康診断で指摘されるまで心房細動に気づいていなかった方もいらっしゃいました。

心房細動は加齢とともに発症率が高くなる疾患です。特に、高血圧や糖尿病、心臓弁膜症などの基礎疾患がある方は注意が必要です。

心房細動についてより詳しい解説はこちら

心室性期外収縮の見られる症状

心室性期外収縮は心臓の下の部分である心室から、通常よりも早く収縮の刺激が発生する不整脈です。「脈が飛ぶ」と表現されることが多い症状です。

多くの人は胸がドキッとする、脈が一瞬止まる感じがするといった自覚症状を経験します。しかし自覚症状が全くない場合もあり、健康診断の心電図検査で初めて見つかるケースも多いです。

期外収縮は健康な人にも起こりうるもので、特に心配のない場合がほとんどです。しかし頻度が多い場合や、他の心臓病を合併している場合は、治療が必要となることもあります。

冠動脈疾患の影響と心電図の変化

冠動脈疾患とは心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が動脈硬化などで狭窄・閉塞し、心臓の筋肉に十分な酸素が供給されなくなる病気です。狭心症や心筋梗塞といった病気が含まれます。冠動脈疾患があると、心電図に変化が現れることがあります。

代表的な変化としては、ST上昇、ST下降、T波の異常などが挙げられます。ST上昇は、心筋梗塞が疑われる所見です。心筋梗塞は心臓の筋肉の一部が壊死してしまう病気で、緊急の治療が必要です。ST下降は、狭心症が疑われる所見です。狭心症は心臓の筋肉への血流が一時的に不足することで、胸痛などの症状が現れる病気です。T波の異常は冠動脈疾患以外にも、様々な原因で起こり得ます。

これらの変化は安静時には見られず、運動をした時などに現れることもあります。そのため安静時心電図で異常がなくても運動負荷心電図検査を行うことで、冠動脈疾患の早期発見につながる可能性があります。

QT延長の危険性とは

QT延長症候群は、心電図のQT間隔が異常に長くなる病気です。QT間隔とは心室が収縮し、再び拡張するまでの時間を表しています。QT延長はtorsades de pointes(TdP)と呼ばれる重篤な不整脈を引き起こし、突然死につながる危険性があります。

QT延長症候群は先天的な遺伝子異常が原因で起こる場合と、薬剤の副作用や電解質異常などが原因で起こる場合があります。症状としては失神やけいれん、動悸などが挙げられます。重症例ではTdPと呼ばれる心室頻拍の一種が発生し、突然死に至ることもあります。

QT延長症候群は、比較的まれな疾患ですが、早期発見と適切な治療が重要です。心電図検査でQT延長が認められた場合は、原因の特定と治療方針の決定のために、専門医への受診が必要です。

心電図異常には様々な種類があり、それぞれ症状や危険性も異なります。ご自身の症状や心電図の結果について気になることがあれば、自己判断せずに、医師に相談することが大切です。

心電図異常の主な原因と関連する疾患3つ

「心電図に異常があります」と告げられると、誰でも不安になりますよね。しかし、心電図異常は必ずしも重篤な病気を意味するわけではなく、適切な対応で健康を維持できるケースも多いのです。

高血圧症による影響

高血圧症は、心臓にとって静かなる脅威です。まるで長年働き詰めの労働者のように、心臓は常に高い圧力に耐えながら血液を送り出しています。健康な心臓は伸縮性のあるゴムボールのようにしなやかに血液を送り出しますが、高血圧の影響を受けた心臓は古くなったゴムボールのように硬く柔軟性を失ってしまいます。

私の患者さんの中には長年高血圧を放置していた結果、心臓の壁が厚くなってしまい心電図に異常が見られた方がいました。初期段階では自覚症状がほとんどなかったため、健診で指摘されるまで気づかなかったそうです。高血圧は自覚症状に乏しいため、定期的な血圧測定と心電図検査が非常に重要です。

高血圧が続くと心電図の波形が変化するだけでなく、心臓の筋肉にも悪影響を及ぼします。心臓の筋肉は、酸素と栄養を豊富に含んだ血液によって支えられていますが、高血圧によって血管が硬くなると、この供給路が阻害され、心臓の筋肉が酸欠状態に陥るのです。これは干ばつに見舞われた田畑のように、生命維持に必要な水が行き渡らない状態を想像していただければ分かりやすいでしょう。このような状態が続くと、狭心症や心筋梗塞といった重篤な心臓病のリスクが高まります。

糖尿病と心電図異常の関係

糖尿病もまた、心臓の健康を脅かす危険因子です。高血糖状態が続くと血管の内壁が傷つき、動脈硬化を引き起こしやすくなります。血管は全身に酸素と栄養を運ぶライフラインですが、糖尿病はこのライフラインを徐々に蝕んでいくのです。まる、錆びついた水道管のように血管が脆く、詰まりやすくなってしまうのです。

私が以前診察した患者さんは糖尿病を患っており、心電図検査で異常が見つかりました。その方は足のしびれや倦怠感などの症状も訴えており、糖尿病による神経障害と血管障害が進行している状態でした。糖尿病は心臓だけでなく、目、腎臓、神経など、様々な臓器に合併症を引き起こす可能性があります。

心筋梗塞は心臓の血管が完全に詰まってしまう非常に危険な状態で、糖尿病患者さんは、そうでない人に比べて心筋梗塞のリスクが2~4倍も高いと言われています。心筋梗塞は突然死につながることもあるため、早期発見と適切な治療が不可欠です。

遺伝的要因が影響する心電図異常

生まれたときから心臓にプログラムされた異常、それが遺伝的な心電図異常です。遺伝的な心電図異常は、親から子へと受け継がれる遺伝子の変異が原因で起こります。まるで設計図にわずかなミスがある建物のように、心臓の電気的な活動に問題が生じるのです。

代表的な遺伝性の心電図異常として、QT延長症候群が挙げられます。この病気は心電図のQT間隔という部分が異常に長くなることが特徴で、失神や突然死のリスクを高めます。

遺伝的な心電図異常は自覚症状がない場合も多いですが、家族に心疾患の既往歴がある場合は、一度検査を受けてみることをお勧めします。早期発見と適切な管理によって、重篤な合併症を予防できる可能性があります。

まとめ

心電図異常は、心臓の電気的な活動に乱れが生じている状態です。様々な種類があり、それぞれ症状や危険性も異なります。 健康診断で心電図異常を指摘された場合、不安になる方も多いかと思いますが必ずしも重篤な病気を意味するわけではありません。

心電図異常の原因には、高血圧、糖尿病、遺伝的な要因などがあります。

心電図異常が疑われる場合は、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。

早期発見と適切な治療によって、健康を維持できるケースも多くあります。健康診断などで心電図異常と指摘された方や動悸や胸の違和感など心配な方は、循環器専門医の当院までご相談下さい。



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