大石内科循環器科医院

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糖尿病による合併症リスク|心臓と血管に与える影響と対策方法

2025.04.21 糖尿病

糖尿病は血管に影響を及ぼし、心臓や脳、足など全身にさまざまな合併症を引き起こす可能性がある病気です。日本では約1,000万人が罹患していると推計されており、患者さんの数は増加傾向にあり、放置すると心筋梗塞や脳卒中、足の壊疽(えそ)などの合併症のリスクが高まります。

この記事では、糖尿病が心臓や血管に与える影響、合併症を早期発見するための検査方法、日常生活で取り組める予防策について解説します。健康を守るための知識を身につけ、日々の生活に役立ててください。

大石内科循環器科医院では、糖尿病に関する検査と丁寧な診療を行っています。症状が気になる方はもちろん「ちょっと不安かも…」という段階でも、早めのチェックが何より大切です。地域のかかりつけ医として、あなたの健康を全力でサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

糖尿病が心臓と血管に及ぼす影響

糖尿病が心臓と血管に及ぼす影響について、以下の項目を解説します。

  • 動脈硬化・心筋梗塞・狭心症のリスク
  • 脳卒中のリスク増加
  • 末梢動脈疾患による足の壊疽リスク
  • 自律神経障害による血圧・心拍変動
  • 糖尿病性心筋症

動脈硬化・心筋梗塞・狭心症のリスク

動脈硬化とは、血液中のブドウ糖(血糖)が高い状態が続き、血管の内壁を傷つけ、血管が硬く脆くなった状態です。心臓に血液を送る冠動脈で進行すると、冠動脈疾患につながる可能性があります。健康な血管は弾力性に富み、血液をスムーズに送り出せますが、動脈硬化が進むと血管が硬く狭くなり、血液の流れが悪くなってしまいます。

心臓の筋肉の活動には、冠動脈を通して運ばれる酸素と栄養が重要です。血管が狭窄することで、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養が不足し、胸の痛みや圧迫感、息苦しさといった狭心症の症状が現れることがあります。

血管が完全に詰まってしまうと、心臓の筋肉の一部が壊死する心筋梗塞に至る可能性も否定できません。糖尿病患者さんは、動脈硬化や心筋梗塞・狭心症のリスクが高い状態にあるため、日頃から血糖値を適切に管理し、血管を健康に保つことが重要です。

以下の記事では、心筋梗塞の原因や症状、予防法などをわかりやすく解説しています。心筋梗塞のリスクを正しく理解し、日頃の生活に活かすための情報としてぜひご覧ください。
>>心筋梗塞について

脳卒中のリスク増加

脳に血液を送る血管が動脈硬化を起こすと、脳卒中のリスクが急激に高まります。脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳への血液供給が途絶え、脳の機能が損なわれる病気です。

症状は突然現れ、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出てこない、意識障害など、多岐にわたります。脳卒中は、後遺症が残ることも多く、寝たきりになったり認知機能が低下したりするなど、生活に大きな影響を与える可能性があります。

末梢動脈疾患による足の壊疽リスク

糖尿病は、足の血管にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。足の血管が動脈硬化を起こして、足への血流が悪くなり、しびれや冷え、痛み、歩行時のふくらはぎの痛みなどの症状が現れることを末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん)と言います。

初期症状は軽微で気づきにくい場合もあり、放置すると症状は徐々に進行します。重症化すると、足の傷が治りにくくなったり、潰瘍ができたり、足の組織が壊死して壊疽を起こす可能性がある疾患です。壊疽は細菌感染を併発しやすく、敗血症などの生命に関わる合併症を引き起こす場合もあります。

自律神経障害による血圧・心拍変動

糖尿病は、自律神経にも悪影響を及ぼします。自律神経は、呼吸や消化、体温調節、血液循環など、生命維持に不可欠な機能を無意識のうちにコントロールしている神経です。自律神経が障害されると、血圧や心拍数の調節機能が乱れ、めまいや立ちくらみ、動悸、発汗異常などを引き起こしやすくなることがあります。

消化機能にも影響が出て、便秘や下痢、胃もたれ、食欲不振などの症状が現れることもあります。日常生活に支障をきたすだけでなく、心血管系の合併症リスクを高める可能性もあるため、注意が必要です。

糖尿病性心筋症

糖尿病が長期間続くと心臓の筋肉が弱り、心臓のポンプ機能が低下する糖尿病性心筋症を発症することがあります。高血糖の状態が長く続くことで、心臓の筋肉細胞がダメージを受け、心臓が肥大または萎縮することがあります。

糖尿病性心筋症になると、息切れや動悸、足のむくみなどの心不全の症状が現れ、重症化すると生命に関わる可能性があるため注意が必要です。

糖尿病と心不全は密接に関連しており、互いに影響を及ぼし合う関係にあります。以下の記事では、両者の関係性や悪化するメカニズム、予防のためにできることについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>糖尿病と心不全の関連性|悪化するメカニズムと予防法

糖尿病合併症の早期発見・検査方法

糖尿病合併症を早期に発見・検査する方法について、以下の項目を解説します。

  • 定期的な血糖値検査(HbA1c)
  • 尿検査による蛋白尿・糖尿の確認
  • 血圧・脂質異常の検査
  • 心電図・心臓超音波検査
  • ABI検査(足関節上腕血圧比)による末梢動脈疾患の検査

定期的な血糖値検査(HbA1c)

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去2〜3か月間の平均的な血糖値を反映する検査です。血管を走る赤い細胞(赤血球)の中にあるヘモグロビンというタンパク質に、どれくらいブドウ糖がくっついているかを調べることで、過去の血糖値の状態を推定します。

健康な状態では、HbA1cの値は5.6%未満です。糖尿病と診断された方の目標値は7%未満とされていますが、高齢の方や他の病気をお持ちの方など、個々の状況に合わせて目標値が調整されることもあります。

HbA1c検査は、糖尿病の診断だけでなく、治療効果の判定にも重要です。定期的にHbA1cを測定することで、血糖コントロールの状態を客観的に把握し、治療方針を修正していくことが期待できます。

尿検査による蛋白尿・糖尿の確認

尿検査は、糖尿病性腎症の早期発見に役立つ簡便な検査です。健康な人の尿には、通常タンパク質や糖はほとんど含まれていません。糖尿病によって腎臓がダメージを受けると、タンパク質や糖が尿中に漏れ出すようになります。

尿検査で蛋白尿や糖尿が検出された場合、腎臓の機能が低下している可能性が考えられます。腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を尿として排泄する重要な役割を担っている臓器です。腎臓の機能が低下すると体内に老廃物が蓄積し、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

血圧・脂質異常の検査

高血圧と脂質異常症は、動脈硬化を加速させ、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高める可能性があります。血圧は、心臓が血液を送り出すときの圧力のことです。高血圧は、血管に常に高い圧力がかかっている状態で、血管を傷つけて動脈硬化を促進します。

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が異常な値を示す状態です。脂質異常症も動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。合併症を予防するために、定期的な血圧測定と脂質異常の検査を行うことが重要です。

心電図・心臓超音波検査

心電図検査と心臓超音波検査は、糖尿病による心臓への影響を早期に発見するために重要な検査です。心電図検査は、心臓の電気的活動を波形で記録し、不整脈や虚血性変化(ST変化)を検出します。糖尿病では神経障害により胸痛を感じにくいため、無症状の心筋虚血を発見するうえで有用です。

心臓超音波検査は、超音波を使って心臓の構造や動きをリアルタイムで観察します。心臓の壁の厚さや弁の状態、血液の流れ方などの評価が可能で、心肥大や弁膜症、心機能低下などの早期発見に役立ちます。

健康診断で「心電図異常」を指摘された場合、不安に感じる方も多いかと思います。以下の記事では、異常の主な原因や再検査の流れ、受診のポイントなどを詳しく解説していますので、ご参考になさってください。
>>心電図異常を健診で指摘された方へ!精密検査の流れと対処法

ABI検査(足関節上腕血圧比)による末梢動脈疾患の検査

ABI検査は、足関節と上腕の血圧を測定して、比を計算することで、足の血管の状態を評価する検査です。ABIの値が低い場合は、足の血管が狭窄または閉塞している可能性があり、末梢動脈疾患が疑われます。末梢動脈疾患は、足の血流が悪くなり、痛みやしびれ、潰瘍、さらには壊疽に至ることもあります。

早期発見・早期治療は、合併症の進行を食い止め、健康な生活を維持するために重要です。定期的な検査を通じて、ご自身の体の状態を把握し、医師と相談しながら適切な治療を受けていきましょう。

糖尿病合併症の予防と対策

糖尿病合併症の予防と対策について、以下の6つを解説します。

  • 血糖コントロールの徹底
  • 血圧管理の重要性
  • 脂質異常症の治療
  • 禁煙の重要性
  • ストレス管理と適切な睡眠
  • 定期的な医療機関への受診

血糖コントロールの徹底

血糖値を適切な範囲に保つことが、合併症予防の基礎です。一般的な血糖コントロールの目標は、HbA1cの値を7.0%未満に維持することですが、目標値は年齢や罹病期間、合併症の有無など、個人の状況により異なるため、必ず医師と相談しましょう。HbA1cとは、過去2〜3か月間の平均的な血糖値を反映する検査値で、糖尿病治療の指標として用いられています。

高血糖の状態が続くと、血管の内壁が傷つき、動脈硬化が進行しやすくなります。以下の3つの療法をバランスよく組み合わせて、自分に合った方法で血糖コントロールを行いましょう。

  • 食事療法:バランスの良い食事を心がけ、糖質の量や種類、食べる時間にも気を配る
  • 運動療法:適度な運動は血糖値を下げ、インスリン抵抗性を改善する効果が期待できる
  • 薬物療法:血糖値を下げる薬には、さまざまな種類があり、作用機序や副作用も異なる

食事療法のポイントは以下のとおりです。

  • 野菜を先に食べる
  • ゆっくりよく噛んで食べる
  • 白米ではなく玄米や雑穀米を選ぶ
  • 間食に果物やヨーグルトを選ぶ

工夫次第で血糖値の上昇を抑えることが期待できます。運動療法では、ウォーキングや軽いジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を見つけて習慣にしましょう。週に150分以上の運動が推奨されていますが、最初から無理をせず、徐々に運動量を増やしていくことが大切です。

薬物療法は、医師の指示に従って、適切な薬を服用することが大切です。自己判断で薬の服用を中断することはせず、必ず医師に相談してください。

血糖コントロールをより効果的に行うためには、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。以下の記事では、血糖値を下げるために期待できる7つの具体的な方法について紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
>>血糖値を下げる7つの効果が期待できる方法!生活習慣改善のポイント

血圧管理の重要性

高血圧は、糖尿病合併症のリスクを高める大きな要因です。糖尿病の方は高血圧を合併しやすい傾向があり、高血圧は動脈硬化を促進させるため、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めます。普段から血圧を測り、130/80mmHg未満を目標に保つように心がけましょう。

家庭用血圧計で毎日血圧を測定し、記録しておくことが大切です。減塩を心がけ、適度な運動を続けることが、血圧管理に有効です。医師の指示で、降圧剤を服用することもあります。高血圧は自覚症状がないことが多いため、放置すると知らないうちに血管がダメージを受けている可能性があります。定期的な血圧測定を心がけましょう。

脂質異常症の治療

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が異常な値を示す状態です。脂質異常症も、糖尿病合併症のリスクを高めます。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は動脈硬化を促進させるため、適切な値にコントロールすることが重要です。

健康的な食生活と適度な運動を心がけ、コレステロールや中性脂肪の値を適切な範囲に保ちましょう。医師の指示で、脂質異常症の治療薬を服用することもあります。脂質異常症も自覚症状がないことが多いため、定期的な血液検査が必要です。

以下の記事では、脂質異常症(高脂血症)の基礎知識や原因、生活習慣との関係、治療・予防法について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>>脂質異常症(高脂血症)について

禁煙の重要性

喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を進行させるため、糖尿病合併症のリスクをさらに高めます。ニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。一酸化炭素は血液中の酸素運搬能力を低下させ、血管内皮細胞を傷害し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

早期の禁煙が、合併症予防に重要です。禁煙治療では、バレニクリンの内服薬やニコチンパッチなども活用できますので、医師に相談してみましょう。

ストレス管理と適切な睡眠

ストレスや睡眠不足は、血糖値のコントロールを難しくし、合併症のリスクを高める可能性があります。ストレスを感じると、血糖値を上げるホルモンが分泌され、血糖値が上昇しやすくなり、睡眠不足は血糖値のコントロールを悪化させることが知られています。

リラックスする時間を作ったり、質の良い睡眠を確保したりするなど、ストレスをうまく管理し、心身ともに健康を保ちましょう。十分な睡眠時間は人によって異なりますが、一般的には7〜8時間程度の睡眠が推奨されています。

定期的な医療機関への受診

糖尿病の管理には、定期的な検査と医師との連携が不可欠です。合併症の早期発見・早期治療のためにも、定期的に医療機関を受診し、医師の指示に従いましょう。必要に応じて、専門医を紹介してもらうことも可能です。

糖尿病は自覚症状が少ないため、定期的な検査で早期発見することが重要です。少なくとも年に一度は、HbA1cや尿検査、血圧測定、脂質検査などの検査を受けましょう。

まとめ

糖尿病は血管を傷つけ、心臓や脳、足などにさまざまな合併症を引き起こす可能性がある病気です。動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳卒中、足の壊疽といった重篤な合併症につながる可能性があります。高血糖だけでなく、高血圧や脂質異常症、喫煙なども合併症のリスクを高めるため、適切に管理することが大切です。

日頃からバランスの良い食事や適度な運動を心がけ、禁煙に取り組みましょう。ストレスをため込まず、質の良い睡眠を確保することも重要です。定期的な検査で早期発見・早期治療につなげることが、健康な生活を守るうえで大切です。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診し、専門医と相談しながら、あなたに合った治療法を見つけていきましょう。

糖尿病の管理においては「低血糖」のリスクにも注意が必要です。以下の記事では、低血糖の主な症状や、もしものときの緊急対応について7つの対処法を紹介しています。備えておくことで、安心して日常生活を送るための助けになります。
>>【要注意】糖尿病の低血糖症状と緊急時の対処法7つ

参考文献

Cole J.B., Florez J.C. Genetics of diabetes mellitus and diabetes complications. Nature Reviews Nephrology, 2020, 16(7), p.377-390.

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