心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。1日およそ10万回休まず拍動しています。しかし、狭心症や心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症、不整脈などの心臓病や、生活習慣病などで長年心臓に負担がかかると、心臓の働きが悪くなります。そして、心臓の働きが悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって、生命を縮める病気を心不全といいます。
・狭心症や心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症、不整脈などの心臓病
・高血圧、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高尿酸血症などの生活習慣病
・慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、貧血、睡眠時無呼吸症候群
特に、生活習慣病と心臓病が直接結びつかない方も多くおられると思います。皆様の中にも健康診断等で生活習慣病の疑いがあると指摘された方がいらっしゃるのではないでしょうか?それらの疾患が水面下で心臓に負担をかけているということをご存じですか?生活習慣病自体には症状のないものが多く甘く見がちです。しかし、これらの疾患は心臓や血管にダメージを与え動脈硬化から狭心症や心筋梗塞を発症したり、あるいは心臓を肥大させたりして様々な心臓病を引き起こし、悪化すると心不全を引き起こしてしまいます。
心臓は、全身に血液を送りだすポンプの役割をしています。心不全では、心臓が全身に血液を送り出せないことによる症状や、送り出せない血液が体にたまる症状が出現します。
① 心臓が全身に血液を送り出せないことによる症状(低心拍出の症状)
・全身の疲れやだるさ
・日中の尿量・回数の減少
・夜間の尿量増加
・手足の冷え
② 心臓から送り出せない血液が体にたまる症状(うっ血の症状)
・坂道・階段などでの息切れ
・夜間の呼吸困難
・食欲不振
・むくみ
・体重増加
心当たりのある方はひょっとすると心臓が弱っているかもしれません。このような症状があったら、見過ごさず是非ご相談下さい。
また、その他にもお腹の張りなど、典型的な出ない症状が出ることもありますので、いつもと違う症状がある場合にもお気軽にご相談下さい。
心不全の診断のために、患者様の自覚症状やこれまでの病歴などを診察で聞いたり、聴診したり、そしてさまざまな検査を行って心臓の状態を調べます。
・胸部X線(レントゲン)
心臓の形や大きさ、肺に水がたまっていないかを確認します。
・心電図
不整脈があるかなど、心臓の状態を調べます。
・血液検査
心臓に負担がかかると分泌されるBNP/NT-proBNPというホルモンの量を調べ、心不全の診断や治療効果の判定に用います。また、心不全の原因となりえる糖尿病、慢性腎不全、貧血の有無を調べるためにHbA1c、クレアチニン、e-GFR、ヘモグロビンなども測定します。
・心臓超音波検査(心エコー)
心臓の形、大きさ、はたらきを調べ、心不全の原因や重症度、治療効果の判定に用います。
心不全の治療として主に、①心不全症状を改善する内服治療、②原因となっている病気の治療、③運動療法の3つがあります。
① 心不全症状を改善する内服治療
・利尿薬
・レニン・アンジオテンシン系抑制薬
・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
・β遮断薬
・SGLT2阻害薬
・HCNチャネル遮断薬
・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬
・強心薬
こららの薬を患者様の状態に合わせて組み合わせて処方します。
②心不全の原因となっている疾患の治療
こちらも重要です。例えば心筋梗塞、狭心症が原因となっていれば、狭くなった心臓の血管(冠動脈)を、カテーテルを用いて風船でひろげたり、ステンという金具を入れて血液の流れを良くします。カテーテルでの治療が難しい場合は、バイパス手術を行います。心臓弁膜症が原因であるならば、弁の形を整える手術や人工の弁に取り替える手術を行います。不整脈が原因となっているときは、不整脈を改善させる内服薬が用いられます。
③運動療法
適切な運動は、体力の向上や筋力の維持に効果的であり心臓の負担を減らします。最新の研究では、運動療法を行うことで心不全による再入院の回数が減り、心不全による死亡を防ぐと報告されています。
適切な運動の強さ
運動は強度が強ければ良いというわけではありません。 強さの目安として、自覚症状として「楽である」から「ややきつい」と感じる程度が良いとされています。
出典:一般社団法人 日本心不全学会 心不全手帳第3版より
運動の種類
・有酸素運動
・バランストレーニング
・筋力トレーニング
運動の時間と回数
ややきつい運動(ボルグ指数13程度)を週に1~2回(1回あたり30分程度)
軽めの運動(ボルグ指数11程度)を週に3日以上(1回あたり30分程度)
当院の運動プログラム
当院では、循環器科の専門医院として心臓病をお持ちの方のために安心して運動していただく為の運動プログラムを毎週木曜日(13:30~15:30)に行っています。少しでも心臓の力を回復させたい方や、健康的な生活を送りたい方など当院までお気軽にお問い合わせください。
運動プログラムの一例です。
まずは血圧や脈拍数を測定して異常がないか確認。
皆さん一緒に椅子に座って準備運動から始めます。
それぞれの体力に合わせて負担のない有酸素運動を行います。
スタッフと一緒に楽しみながら取り組んでいただけます。
心不全になると、急に心臓が止まってしまうというイメージがあるかもしれませんが、多くの場合、必ずそうではありません。心不全とは、心臓の働きが悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって、生命を縮める病気と定義されています。
この図は、心不全の一般的な経過を表したものです。心不全の進行は、ステージA~Dの4段階に分類されます。
出典:ノバルティス ファーマ株式会社・大塚製薬株式会社「心臓SOS」より
高血圧や糖尿病などの基礎疾患のある患者さんでは、心不全のリスク状態はステージA、Bです。まだ無症状ではありますが、心不全発症に至らないように生活習慣の改善や基礎疾患の治療を積極的に行っていく必要があります。
ステージCに至り心不全の症状が現れ始めると、進行するにつれ、だんだんと日常生活にも支障をきたすようになります。
ステージDという心不全がかなり進行した段階では、入院日数や入院回数が増え、それまでのような生活を送ることが難しくなってしまいます。そのため、次のステージに進まないために早期発見・早期治療が大切です。
心不全を含む循環器病では予防がとても重要です。心不全を引き起こす原因はいろいろありますが、患者さん自身が気をつけることで、心不全の悪化を予防できることもあります。
・適切な運動
・バランスの良い食事
・処方通りにしっかりお薬を飲む
・塩分を摂り過ぎない
・禁煙する
・お酒を飲み過ぎない
心不全の症状は早期では気づかれないことも多いものです。
日頃から体調の変化に注意し、気になる症状がある時はぜひ当院までご相談下さい。
大石内科循環器科医院
420-0839
静岡市葵区鷹匠2-6-1
TEL:054-252-0585